2024年12月2日以降、現行の保険証は新たに発行されなくなり、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する。しかしマイナ保険証の利用率はいまだに10%台だ。政府はマイナ保険証の普及を急ぐのか。個人情報保護に詳しい中央大学教授の宮下紘氏に聞いた――。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年12月13日号)の一部を再編集したものです。

マイナンバーカードを搭載したICカードリーダー
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残り2カ月の状況でも86%が「紙の保険証」

日本社会の「DX(デジタルトランスフォーメーション)のインフラ」と、政府が位置づけているのが、皆さんもご存じの「マイナンバーカード(個人番号カード、以下マイナカード)」です。国民のさまざまな個人情報をデジタル化して、マイナカードで活用できるようにすることで、行政手続きの効率化・高速化、革新的な利便性アップにつなげるというのが政府の主張です。

2016年の交付開始以来、政府が普及に努めた甲斐あって、すでに国民の約8割がマイナカードを保有しています。政府は、マイナカードの利用促進にも余念がありません。その目玉の政策として、24年12月2日には、従来の「健康保険被保険者証」を実質的に廃止し、マイナカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」に切り替えようとしています。

ところが、国民は、マイナ保険証に「NO」を突き付けています。厚生労働省は24年9月のマイナ保険証利用率が13.87%で、同年8月の利用率(12.43%)からわずか1.44%しか上昇しなかったことを公表しました。つまり、マイナ保険証の全面稼働まで残り約2カ月という状況下で、86.13%の人が「紙の保険証」を使っていたわけです。

このマイナ保険証利用率は端的に言えば、病院、調剤薬局などで公的医療保険を利用した人のうち、手続きでマイナ保険証を提出した人の割合。もう少し説明すると、医療機関などが利用者の保険資格をオンライン上で調べる「オンライン資格確認」の作業件数が、同年9月は1億9569万件で、そのうち、マイナ保険証を使った資格確認の件数が2715万件、割合にすると、13.87%だったということなのです。

【図表】国民の約9割がマイナ保険証を使っていない

マイナ保険証の導入は、はっきり言って現段階では「失敗」だと、私は評価しています。なぜ利用を拡大できないのでしょうか。