“あやふやなニュアンス”では伝わらない

これらの「やばい」は、それぞれどんな気持ちを表しているでしょうか。

①は、準備ができずに緊張している様子かもしれません。
②は、デザートがおいしかったのでしょうか。それとも期待外れだったのでしょうか。
③は、相手が誕生日を覚えていたのが迷惑だったのでしょうか。それとも、嬉しかったのでしょうか。
④は、報告書の内容が間違っているのでしょうか。それとも素晴らしかったのでしょうか。あるいは、自分が内容を理解できないのでしょうか。

このように、「やばい」は、いろいろな意味を大ざっぱに説明するのに便利な言葉ですが、言われたほうは相手が何を言いたかったのか、ニュアンスをあやふやにしか理解できない表現です。

相手に伝えるには、今の気持ちをいちばんよく表現しているのはどの言葉なのか、「今はこっちだな」「いや、もう少し違うニュアンスのほうがしっくりくるな」と、自分で言葉を探していく努力をしていかないといけないと思うのです。

感覚的にはとても細かい部分になりますが、あいまいな感覚で言葉を操るのではなく、「今、このときはこの言葉だ」と、確信と責任をもって表現することが必要かなと思います。

「いい表現」をするには努力が必要

またそのためには、比喩表現を効果的に使えることも大切です。「いいたとえをしよう」と、常に構えている必要はありませんが、たくさんの例を知っておくように心がけてみると、いざという時に、すぐに取り出すことができます。

同時に、自分の表現の引き出しを増やすために、評判になっている小説を読んだり、話題になっている映画を観たり、絵画や建築などの美術作品に触れたりと、いろいろなものを目にしてください。

リビングルームのソファで本を読んでいる男性
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

作品を前に、作者はどのような思いでそれに取り組んだのか、制作中は何を考えていたのかなど、想像を膨らませて、自分なりに解釈をしていきましょう。与えられるものを受け取るだけで何の努力もせずに、いい表現が生まれるわけはないのです。

最後は、いろいろな場で、実際に試してみて、実践をしていきます。これはスポーツと同じです。

どんなに優れた選手でも、実践の経験なしに、最初からホームランを打ったり、シュートを決めたりすることはできません。他流試合や出稽古を続けて、自分の表現を磨いていきましょう。着実に練習を重ねる努力を続ければ、必ずうまくなれますよ。