それでもロシアに味方する理由は
カーネギー国際平和財団は、北朝鮮の金正恩総書記がロシアへの軍事支援を決断した背景について分析を示した。同財団は、この決断について「個人崇拝は存在するものの、北朝鮮にイデオロギー的な要素はほとんどなく、金正恩は一貫して実利的な外交政策を追求してきた」と指摘する。
前提として、北朝鮮が得られる「短期的」な利益は、限定的だという。同財団によれば、「北朝鮮はすでに弾薬供給の対価として、必要不可欠な食料、石油、資金をロシアから受け取り始めている」状況だ。北朝鮮側は核兵器開発や航空技術の獲得も望んでいるが、ロシアは現時点でこれらの提供に積極的ではないという。
金正恩総書記の真の狙いは、むしろ長期的な関係構築にあるとみられる。同財団は「1990年のソ連による経済支援停止以降、北朝鮮は冷戦時代の『良き古き時代』への回帰を模索してきた」と分析する。これまでは実現できなかったこの目標が、ウクライナへの部隊派遣によって、かつてないほど現実味を帯びてきたとの見方もある。
北朝鮮は「ウクライナでの戦闘が終わり、ロシアが支援を必要としなくなった後も、両国の同盟関係が継続することを期待している」と同財団は指摘する。そのため北朝鮮は、貿易や観光、学生交流から、兵士や労働者の派遣まで、幅広い分野でロシアとの関係強化を進めたい思惑だ。
北朝鮮の関与は今後拡大の見込みだが、継続は難しい
北朝鮮からロシアへの軍事支援は、拡大する兆しが見られる。
ロイターによると、韓国軍の統合作戦を指揮する合同参謀本部は、北朝鮮がロシアに追加の兵力と自爆型ドローンなどの武器を送る準備をしている兆候を検知したと報じている。
こうした動きについて、韓国軍当局者は警戒感を示している。北朝鮮がロシアとの軍事的つながりを強化することで、韓国にとってより大きな脅威となる可能性があるためだ。特に、北朝鮮は韓国より劣勢とされる通常戦力の近代化を進められるうえ、実戦経験も得られることから、軍事力の向上が懸念されている。
しかしながら、北朝鮮がロシアへの人的支援を長期的に維持することは難しいだろう。急速に増えつつある死傷者数が、その事実を物語る。犠牲者を抑えるには状況の改善が必須だが、ロシア語の高い壁、根底的に不足している近代戦への対応能力、精鋭部隊が本来得意とする作戦行動とのミスマッチなど、一朝一夕に改善しがたい課題が横たわる。
隘路をゆくロシア軍に手を貸すことでプーチン大統領へ恩を売る金正恩氏だが、現実は甘くなさそうだ。