リクライニングはマナー違反なのか

旅行に帰省にと、移動の機会が増える年末年始。楽しい旅路のうえでも気に掛けておきたいのが、座席のマナーだ。飛行機や新幹線などで座席を倒すべきか否かの論争は、いつの世も絶えることがない。

飛行機の座席
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事情は日本だけでなく、欧米でも同じようだ。調査によるとイギリス人の半数弱、アメリカ人の4人に1人が、前席の人による座席のリクライニングを迷惑に感じるという。一方で、寛容派も存在する。米航空会社の現役フライトアテンダントは、座席を倒すことに何ら問題はないと断言する。

お互いの思いを尊重しつつ、それでも狭い座席を少しでも快適に過ごすには、どのような対応が好ましいか。インバウンドの増える昨今、国際線だけでなく国内の新幹線などでも、海外客と座席を前後する機会はありそうだ。決して身構える必要はないが、スマートなマナーを知っておくことで、お互いにより気兼ねなく過ごせるだろう。

また、海外のアンケート調査により、座席のリクライニング以上に周囲の乗客の反感を買いやすい行動があることも明らかになっている。要注意の行動を併せて覚えておきたい。

座席トラブルで搭乗禁止になるケースも

米全国紙のUSAトゥデイは、航空機の座席リクライニングをめぐる論争が激化していると伝えている。航空各社は利益率を上げようと、座席スペースを縮小している。ただでさえ限られたスペースが、前席のリクライニングによってより圧迫されることで、諍いは絶えない。

たかがリクライニングと侮ることなかれ、口論が原因で搭乗禁止を言い渡された乗客もいる。サウスチャイナ・モーニングポストは、香港の航空会社キャセイパシフィックが広東語を話す乗客2名の搭乗を禁止処分にしたと報じている。

事件は今年9月17日の香港発ロンドン行き253便で発生した。中国本土からの女性乗客が座席を倒したことをきっかけに、後方の広東語を話す夫婦と口論になった。夫婦は女性の座席を後ろから揺らし、腕を蹴るなどの暴力行為を行った上、女性の広東語が流暢でないことに気付くと「本土の女」などと差別的な発言を行ったという。

機内では他の乗客たちが、広東語と標準中国語で夫婦の行為を非難。「香港人として恥ずかしい」「自分を香港人と呼ぶな」などの声が上がった。被害に遭った女性は客室乗務員に助けを求めたが、座席のリクライニング角度をある程度戻すように言われただけだったという。これに対しこの女性は、「食事の時間でもないのに、なぜ私が妥協しなければならないのか」と不満を示している。

キャセイパシフィックは、問題発言を行った後席の夫婦に対し2回にわたり、厳重な警告を発した。態度が改善しなかったことを受け、今後の同社の全便での搭乗を禁止する処分を下した。