原因は航空会社にあるのだが…
こうした見解は、短距離便の場合だ。米企業研修講師のゴッツマン氏は、フライトの長さによってリクライニングの可否は分かれると説明している。特に長距離フライトについては、「乗客は快適さを求めていますので、これを制限するのは現実的といえません」と指摘。「特に夜間便では睡眠が重要になってきますので、多くの乗客がほぼ同時に座席を倒します。このため、リクライニングは許容されます」としている。
そもそもリクライニング論争が起きる根本原因は、座席の狭さだ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のジム・サルツマン教授は、BBCに、「航空会社は以前より座席を詰めて配置しています。その結果生じる(乗客の)不満や怒りを、乗客同士の非難合戦に転嫁しているのです」と、問題の本質は近年の座席配置にあると指摘する。
それでも乗客としては、与えられたスペースでやり繰りするほかない。トラブルを避けるためには、座席を倒す際に注意するとよいポイントがあるという。
エチケットコーチのウィリアム・ハンソン氏は、BBCの取材に対し、「(後席がテーブルを広く使いたい)食事の時間帯は避けましょう」とアドバイスする。前述のフライトアテンダントの説明に反するようだが、機内食サービスの前に、座席を元の位置に戻すようアナウンスしているエアラインは多い。
ハンソン氏はまた、食事時間以外で席を倒す際は、「後ろの乗客がテーブルに寄りかかっていないか、ノートパソコンを使用していないか確認してから、ゆっくりと倒すとよいでしょう」とアドバイスしている。
「判断に迷う場合は、後ろの乗客と言葉を交わすことです」と続けるハンソン氏は、「相手が心を読めると思うのはよくありません」と説く。もし相手が海外客などで言葉が通じない場合は、目配せをするか、軽く振り返るそぶりをしてからゆっくり倒すなどの対応が考えられるだろう。
一言の声かけでいい
慎重すぎるようにも思えるが、リクライニングしたばかりに後席のノートパソコンを壊してしまうケースは、実際にままあるのだという。米科学解説誌のポピュラー・メカニクスは2020年2月、米デルタ航空で前席の客がリクライニングした際、挟まれて画面が破損したというMacBook Proの画像を掲載した。テーブルに載せて画面を直角に近い角度で立てていたところ、急に倒れてきた前席に押しつぶされた形だ。
CNNに記事を寄せるフライトアテンダントのプール氏も、「飲み物がこぼれたり、ノートパソコンが壊れたりするのを目にすることがあります」と述べる。