リクライニングされて激昂する乗客はめずらしくないが、プール氏は、リクライニングは乗客の正当な権利だと強調する。「乗客はシートを倒す際、(後席に)許可を求める必要などありません。アメリカの航空会社では、たとえ機内食のサービス中であっても、シートを起こす必要はないのです」と説明。
さらに、「シートを倒したい人にはその権利がありますし、それについて誰も異議を唱えることはできません」と強調。「もしもシートを蹴ったり、殴ると脅したりすれば、機から降ろされるのはシートを倒した人ではなく、そのような行為をした人なのです」とも注意を促している。
「倒せるからといって倒すのはマナー違反」という異論も
プール氏の説明を正面から受け止めるなら、いつ何時であっても周囲を気遣わずリクライニングしてよい、となる。だが、これには異論もあるようだ。
エチケットに関するコンサルティング・サービスを提供するマナースミス・エチケット・コンサルティング社のスミス社長は、米ハフポストの取材に対し、「近年の航空機では座席スペースが縮小しています。他の乗客に迷惑をかけることなく、自身の快適さを確保することは、大きな課題となっています」と指摘。他の乗客に迷惑をかけないことは大前提だと受け取れる。
別のエチケット講師であるクレイター氏は、同記事の中で、「エチケットは単にフォークの使い方などの話ではなく、その本質は他者への配慮にあるのです。ですから、座席を倒して他者の快適さを損なうとなれば、エチケットの基本原則に反します」との見解を述べる。「座席を倒す機能が付いているからといって、それを使うべきだということにはならないでしょう」というのがクレイター氏の意見だ。
エチケットの専門家らからは、気兼ねなく座席を倒せるのは特定の場合に限られるとの声も上がる。後ろの座席が空いている場合や、後ろの乗客が小さな子供であり、倒してもさほど邪魔にならない場合などだという。
加えて、ファーストクラスやビジネスクラスでは比較的広いスペースが確保されているため、他の乗客のパーソナルスペースを狭めることなく座席を倒すことができる。さらに、倒したい側の乗客自身の背が高かったり、腰痛を患っていたりなど特段の事情がある場合、そして膝に幼児を載せている場合などについても、離陸後は座席を倒して問題ないとエチケットの専門家らは述べる。