米高齢者と若者に目立つ“リクライニング禁止派”

リクライニングを不快に思う乗客は、決して少なくないようだ。米家具大手のラザボーイ社は、世論調査会社のハリスポールに委託し、今年10月にリクライニングに関する意識調査を実施した。回答した2051人のアメリカ人成人のうち、国内線でのリクライニング禁止に賛成だと答えた人の割合は、実に41%に上ったという。とりわけ、65歳以上の高齢層と、18~34歳の若年層でこうした意見が目立った。

イギリスでの反応はどうか。英BBCは、航空チケット検索大手のスカイスキャナーが2023年に実施した調査を取り上げている。イギリス人の40%が、座席の背もたれを倒されることを迷惑に感じているとの結果になった。

旅行専門家のブライアン・マーフィー氏は、USAトゥデイの取材に対し、「国内線でのリクライニング禁止は理にかなっている」と私見を述べる。マーフィー氏は「上空3万フィートを飛ぶただでさえ狭い機内で、これ以上の緊張を生む要因が必要でしょうか」と指摘。「リクライニング禁止の方針が明示されていれば、すべての乗客が快適に過ごすことができ、機内の平和を保つ明確な方針となるでしょう」と主張する。

一方、座席にはリクライニング機能が備わっていることから、その禁止は権利の一部を抑制されていると感じる人々もいる。出張で頻繁に航空機を利用するという、米ミネアポリス在住のマリア・オパッツ氏は、同紙の取材に対し、「乗客は座席料金を支払う際、リクライニング機能も含めたあらゆる機能を使う権利を買っているのです。使用を躊躇する必要はないでしょう」と反論している。

離陸する飛行機
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現役フライトアテンダント「許可なく倒してよいのです」

航空会社の現場では、リクライニングの是非をどう判断しているのか。米主要航空会社に現役フライトアテンダントとして務め、著書に『Cruising Attitude: Tales of Crashpads, Crew Drama and Crazy Passengers at 35,000 Feet(抄訳:クルージングの心得:上空3万5000フィートでの仮眠、クルーたちの非日常、そしてクレイジーな乗客たちの物語。クルージング姿勢は巡航高度Cruising Altitudeに掛けている。)』があるヘザー・プール氏は、米CNNへの寄稿で、機内でのリクライニングシートを巡るトラブルについて見解を述べている。

プール氏によると、機内でのリクライニングシートに関する苦情は、Wi-Fiの不具合や機内エンターテインメントシステムの故障に次いで頻繁に寄せられているという。

実際の便で起きた出来事として、彼女は次のようなケースを例示する。ある年配の女性客が、前の座席に座っていた10代の少女に対し、「もう一度シートを倒したら、顔面を殴るわよ」と脅したという。この際プール氏は問題の女性に対し、「殴る権利など誰にもありません。もう一言でも言ったり何かしたりすれば、当局に通報します」と警告し、事態の収拾を図った。