オーストラリアのエチケット専門家であるジョー・ヘイズ氏は、USAトゥデイ紙に対し、「リクライニングは私たちの権利です」としたうえで、「後ろの乗客にとっては迷惑にもなり得ます」と双方の立場を認める。具体的な対処法としてやはり、コーヒーをこぼしたりノートパソコンに衝撃を与えたりしないよう、「できるだけゆっくりと」座席を倒すことを勧める。

可能ならば「後ろを振り向いて、『すみません』と一言添える」となおよいという。気後れしてなかなか言葉は掛けづらい場合、せめてテーブルが空であることを確認して、軽く会釈するくらいが現実的だろうか。「こうした小さな気遣いは、(双方の)不快感を和らげる上で大きな効果を発揮します」とヘイズ氏は述べ、トラブルを未然に防止する効果を強調する。

飛行機の機内食を食べる人
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隣席の客を通すとき、シートに縮こまってはいけない

ここまで座席のリクライニングを中心に議論してきたが、機内や列車内において、ちょっとした工夫で避けられるトラブルはほかにもいくつかある。

BBCは、スカイスキャナーが2023年に実施した調査をもとに、イギリス人航空旅客のおよそ3人に1人が、「アームレストを独占する行為」に不快感を覚えていると伝えている。エチケット専門家のハンソン氏は、「アームレストという考え方から肘置きという発想に切り替え、隣席の乗客と共有すべきです」と提言する。腕全体を載せるのではなく、控えめに部分的に肘を置くべきとの意見だ。

このほか、トイレに立つ際のマナーについても一悶着あるようだ。世論調査会社のユーゴブの調査結果によると、アメリカ人の過半数が「他の乗客の上を跨いで通路に出ることは好ましくない」との見方を示している。隣席の相手が通路側に出たい場合、日本の感覚では、座席に身を縮めるようにして膝前を通ってもらうことも少なくない。しかし欧米の感覚では、スペースを嫌々譲っているように受け取られかねない。そこで、一度立ち上がって通路に出るとスマートだ。

事前のコミュニケーションが効果的

もっともハンソン氏は、自身が搭乗する際には、柔軟に対応しているという。「私が通路側の席になった場合は、就寝前にあらかじめ隣席の乗客に声を掛け、用事があれば起こすか、跨いで通ってもらって構わないと伝えるようにしています」と明かしている。

着陸時の行動も議論を呼んでいるようだ。スカイスキャナーの調査では、機が着陸してゲートに着いた直後に立ち上がる乗客たちに対し、イギリス人の約3分の1が不快感を示しているという。