12月3日、2013年にロシアのプーチン大統領から秋田県の佐竹敬久知事に贈られたシベリア猫の「ミール」が病気で死んだ。ウクライナ戦争が始まった直後には、佐竹知事が「うちのミールはプーチン大統領と違って非常に優しいし、おとなしい。大変皮肉ですね」と非難したことでも話題になった。「ミール」はどんな猫だったのか。ライターの伊藤秀倫さんが佐竹知事に聞いた――。
ロシアのプーチン大統領からプレゼントされたシベリア猫「ミール」を抱く秋田県の佐竹敬久知事=2013年2月5日午後、秋田県庁(代表撮影)
写真提供=共同通信社
ロシアのプーチン大統領からプレゼントされたシベリア猫「ミール」を抱く秋田県の佐竹敬久知事=2013年2月5日午後、秋田県庁(代表撮影)

プーチン大統領から贈られたシベリア猫

2024年12月9日、秋田県庁で「知事臨時記者会見」が開かれた。集まった記者を前に、佐竹敬久知事(77)はこう切り出した。

「シベリア猫のミール君が亡くなりました」

「ミール君」とは2012年にロシアのプーチン大統領から秋田県に贈られたシベリア猫である。もともとは前年に起きた東日本大震災におけるロシアからの援助に対するお礼として、犬好きのプーチン大統領に外務省を通じて秋田犬「ゆめ」を贈ったことが最初のきっかけだ。そのゆめへの“返礼”として秋田県にやってきた猫を、愛猫家として知られ、すでに家で他の猫を飼っていた佐竹知事が引き取り、ロシア語で「平和」を意味する“ミール”と名付けたのである。

秋田県庁のホームページにはミール君の動画が定期的に掲載されるほど、知事は特別な思い入れを持って接してきた。そのミール君が12月3日に12歳と10カ月の生涯を閉じたことを受け、知事は会見で「私も長い間ミール君と一緒に過ごしましたんで、大変悲しい思いをしてます」とその胸中を率直に語った。

「私のベッドには来ないんですね」

さらに記者からミール君との一番の思い出を問われると、こう応じた。

「ミール君、臆病なんです。で、あの動物愛護センター、あそこに行って、あのタワーで遊ばせようと思ったら、怖くて引っ込むんですよ。で、あのタワーに何となく上がらないんですよ。で、ほかの猫は上がるんだよ。で、最後は一番奥に入っちゃって、出すに大変難儀したっていう、そんな思いがあります。

あと何回か、うちの広報のほうでも映像を撮ろうとしていきますと、黒いスーツを着た人からは逃げるんですよ。明るいスーツはいいけど黒いスーツは嫌うんです。で、私もダークスーツが多いもんですから、私には余りつかなかった。うちの妻と娘、大変妻が悲しんでますが、ミール君が夏頃からだんだん弱ってきてからは、うちの妻のベッドの上で寝るんですよ。私のベッドには来ないんですね」

ロシアとの友好の証であるという側面はあるにせよ、知事の愛猫の死について臨時記者会見が開かれ、記者との間でこういうやりとりがなされたことに新鮮な感動を覚えた私は改めて、佐竹知事にミール君について話を聞いた――。