佐竹北家の21代目当主

窓の外では、時折、地吹雪が舞っていた。

「やぁ、どうもどうも」。予定時間より早く秋田県庁内の一室に、佐竹敬久知事(77)が入ってきた。旧華族の家柄である佐竹北家の21代目当主である佐竹氏は、東北大学工学部を卒業後、秋田県庁に入庁し、県職員として勤務。97年に退職後、秋田県知事選に立候補して敗れるが、2001年には秋田市長戦に出馬して当選。これを2期務めたあと、09年には再度知事選に挑み、リベンジを果たす。以降当選を重ね、今年で4期16年目となるが、来年4月に任期満了を迎えるにあたって、知事の座を退任することを表明している。

「もう年だもん! 77歳。(日本人男性の)平均寿命まであと4年です」

インタビュー冒頭、そのことに話が及ぶと、佐竹知事はこう言って破顔した。インタビューというと「何を聞かれるのか」と身構える政治家がほとんどだが、この人にそういう気配は皆無だ。早速、今日の「本題」に入る。

秋田県庁。取材中は時折、地吹雪が舞っていた
撮影=プレジデントオンライン編集部
秋田県庁

捕獲したクマは「結構太っていた」

――11月30日に土崎港のスーパーに現れたクマが立てこもった事件について、最初に「土崎にクマが出た」と聞いた時はどう思われましたか。現場は市街地で、しかも港ですからクマとは無縁な場所に思えますが……。

そのちょっと前から周辺で目撃情報が相次いでいたので、驚きはありませんでした。昨今の状況では県内のどこにクマが出てもおかしくはない。私の自宅から20メートルのところにも出たくらいで、今は朝と夕方の散歩も控えてます。子どもさんがいる家なんかは、家の周りで安心して遊ばせられないというので、かなり日常生活に影響が出てますね。

土崎のクマについてはいろんな説があるけど、問題はあのクマがどこから来たのか。あの浜のあたりにも防風林とかクマが隠れられそうな茂みなんかも結構あるんですよね。ある専門家は「山から来たクマが、そういう茂みを利用して周辺にすみついたのでは」と言ってました。いわゆる「アーバンベア(市街地周辺で生活し、市街地に出没するクマ)」じゃないか、と。

というのも捕獲してみたら、結構太ってたというんだな。栄養満点で、ドングリやなんかが不作でお腹を空かせて山から下りてきたわけじゃなさそうだぞ、と。スーパーにあった食品はまったく食べてないわけだ。だから食料を求めて迷い込んだというよりは、もともと近くの林までは来ていて、人を避けて移動していくうちにスーパーに入り込み、運悪く(被害者と)鉢合わせしてしまったという状況だったのかもしれません。