33歳の会員が教えてくれた田島会長の素顔
困っている人に寄り添う――。田島さんがいちばん大切にしていることだ。これは被災者に対してだけではない。哥麿会の会員に対しても同じだ。
「無理難題を言われることもあるし、怒られることもある。でも、
こうに話すのは20歳で会員になった秋山和也さん(33)。本業は大型トラックドライバー。会ではカウントダウンイベントの準備、災害ボランティアの炊き出しの材料の手配、公式YouTubeチャンネルの運営などを担当している。
秋山さんは、小学1年生の頃、家族でキャンプに行く途中のコンビニで雑誌『トラックボーイ』の表紙に写っていたデコトラに一目惚れした。その場で父親に雑誌を買ってもらって以来、約25年間デコトラを趣味としている。「好きなことはどんどんやった方がいい」という父に連れられて、小学2年生の頃から利根川の河川敷で開催されているカウントダウンのイベントにも毎年参加してきた。
秋山さんには田島さんとの忘れられない思い出がある。
2014年4月下旬、東京であった哥麿会のイベントに参加していた時に、スマートフォンが鳴った。児玉警察署の警察官からの電話だった。「秋山さんですね。父親の身元を確認してほしいので、今すぐ警察署に来れますか?」と言われた。
「俺は1人じゃないって気づいたんだ」
3時間かけて警察署に向かうと、そこには自ら命を絶った父親がいた。
「間違いなく本人です」と警察官に答えた。
「涙が止まらなかったよね。でも、1週間後に静岡で哥麿会の全国大会があったんだ。そのことをおかんに話したら『あの人だったら行けって言うだろうし、全国に仲間もいるんだから行かなきゃダメだよ』って言われたんだよね。親父とおかんは離婚していたから、葬式の喪主は俺が務めることになった。月曜日から水曜日で葬式を終えて静岡に向かったよ」
秋山さんは気持ちの切り替えができないまま、哥麿会の全国大会にスタッフとして参加した。「東日本大震災 復興チャリティー大会 in 袋井」と名づけられたイベントは、日が暮れた後に行われるデコトラのライトアップショーも終わり、無事に成功。テントや屋台をトラックに積み込み、撤収作業が完了した暗闇の中で、田島さんから声をかけられた。
「今日も終わったな。大丈夫か?」
「イベントの最中に会長に気を遣わせたくない」と思っていた秋山さんは、自分の事情を伏せていた。この1週間で起こったことについて言葉を振り絞るように告げた。
「実は親父が亡くなって……」
その言葉を聞いた田島さんは声を荒げた。
「何で言わないんだよ!」
「言うのが今になってしまって……すみません……」
「何か困ったことがあったら……、言えよ!」
それ以上、田島さんは何も言わなかった。
「ずっと応援してくれていた親父が亡くなってさ、これから困った時に頼れる人はいないと思っていた。でも、違った。会長もいるし、哥麿会もある。俺は1人じゃないって気づいたんだ。本当に救われたよね……」