バリアフリー化への私見

名古屋市は「様々な工夫により、可能な限り上層階まで昇ることができるよう目指」しているという。その姿勢は失うべきではない。また、今後の技術の進歩により、バリアフリーを実現するうえで、あらたに可能なことも出てくるだろう。

香原斗志『お城の値打ち』(新潮新書)
香原斗志『お城の値打ち』(新潮新書)

だが、名古屋城天守を木造復元する意義が、この特別な建築をよみがえらせて後世に伝えることにある以上、オリジナルの構造を大きく損ねるようなバリアフリー化には、私は否定的にならざるをえない。

その結果、障害者が上層階に登れないのが問題であるなら、身体に障害がない人も登らなければよいとさえ思う。だが、現実には、入場料を徴収して内部に人を入れなければ、復元にかかった費用を回収できず、維持費も確保できない。

それなら、障害がない人も、昇降機等で車いすを運べる階までしか登れないようにするのも一案だろう。だが、いちばん大切なのは、ここに述べた木造復元の意義について、理解が行き渡ることではないだろうか。

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