アルタを見つめて立っている人の脳内

3月6日金曜日。一般の客入れは11時半からなので11時15分までに関係者受付に来るように言われた我々は、ギリギリの時間にアルタへ着いた。アルタ前というのは待ち合わせのメッカでもあり、常時人混みの絶えない場所柄ではあるが、一見して人だかりがしている。

新宿アルタ
新宿アルタ(写真=Kakidai/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

この日の出演者は、タモリ、さんま、峰竜太、林家こぶ平、早坂好恵のレギュラーと、テレフォンショッキングが浅香唯である。とっくに11時を過ぎたその時間には、タレントはすでに中に入っているだろうに、人だかりは去ろうとしない。アルタを見つめて立っている。この中にさんまがいるのね、ってことなのだろうか。

その人だかりを通り抜けてエレベーターに乗り7Fまで昇った。エレベーターの扉が開いた途端、エレベーターの箱の中にいるままでチェックが行なわれる。誰でも乗れるエレベーターであるがゆえ、全てはここでチェックするしかないのだろう。

かなりちゃんとしたところまで説明しないと、その警備員はそこをどいてはくれない。やっと許しが出てフロアに降り、受付で名簿との照会と注意事項を受けてから10分ほど待って、一般の客入れと同時に別のドアからスタジオ内へ入る。

「思ったことは即、口に出して」

入ってくる客は9割以上が女性だ。さまざまである。ヒステリックグラマーのスタジャンを着た専門学校生ふうの女のコもいれば、どこから見てもOLってのもいるし、50すぎのおばさんグループもいる。他のどんな公開番組よりも、客の特徴づけができないかもしれない。この人たちをくくる言葉があるとすれば「庶民」というのが最適だろう。

全員が席に収ったのがだいたい11時45分ごろ。そこからスタッフ(AD)による前説もどきの諸注意説明がはじまる。タゴとかいう名前のそのADは、タモリがよく番組の中で「へんな前説」として話のネタにするやつである。

その人は本当に「へん」で、普通ならば「キモチわるい」ということで、いわゆる客が引いてしまうレベルの「へん」な人だ。しかし客は決して引かなかった。そして、ここで引かないことが、それからの1時間がいつもと同じテンションでいけるということをもすでに決定づける重要なポイントだったのである。今考えればの話だが。

客は、スタジオに入って席についてからわずか15分ほどで本番を迎えることになっている。その15分のうち14分30秒まで、すなわち11時59分30秒までは、そのADがステージ上にいるのである。ADは、私が予想していたより、はるかに具体的に客を指導した。一番おどろいたのは「思ったことは即、口に出して表してください」というくだりだ。