皇室の聖域性を損なう“禁じ手”

それでも古いルールにしがみつこうとすれば、いったいどうなるでしょうか。厳格であるべき皇室と国民の区別をあやふやにして、皇室の「聖域」性を損なう“禁じ手”のプランに逃げ込むしかなくなります。すでに国民になっているいわゆる旧宮家系子孫の男性を、「婚姻」という心情的、生命的な結合もなく養子縁組などの法的措置だけで、民間から皇族に迎え入れるというプランです。

これは万が一にも首尾よく(?)ことが運んだ場合、歴史上かつてない、“国民出身”の天皇を登場させることに道を開く愚挙です。広い意味では「皇統に属する男系の男子」であっても、歴史上の人物でいえばすでに臣下しんかになった平将門たいらのまさかど足利尊氏あしかがたかうじなどを皇族に迎えて、その子孫が即位できるようにするに等しいでしょう。かの道鏡どうきょう皇胤こういん(皇室の血を引く子孫)説がありました。もし道鏡が皇胤だったら、その子孫を天皇にしようというプランです。

皇統が断絶してしまう

もともとは皇室の血筋から分かれていても、親の代からすでに国民です。その子孫はもはや“国民の血筋”になっています。そうである以上、旧宮家系の天皇がもし将来に現れたら、そこで皇統は断絶し、国民の血筋による“新しい王朝”に交替します。

さらに、男系男子限定ルールのままであれば、やがて養子縁組の対象を旧宮家系子孫だけに限定することも限界にぶつかるでしょう。あるいは養親ようしんのなり手がいなくなれば、養子縁組という手順自体も限界に達するでしょう。そうすると、広い意味で「皇統に属する男系の男子」は旧宮家系のほかにも多く実在するので、次々と対象を広げて、しかも法律一本だけで皇族の身分を取得するという、乱暴このうえない最低な末路をたどることになりかねません。

こうなると皇室と国民の区別も、皇室の「聖域」性も、ほとんど顧みられなくなってしまうはずです。