油断できない危ういプラン

もともと「皇位の世襲」というのは、長年にわたって国民から信頼を集めてきた特定の血統=“厳密な意味での皇統”によってのみ天皇の地位は受け継がれるべきだ、という考え方に立脚しているはずです。しかし、その基礎を掘り崩す暴挙でしょう。

もっとも、自ら養子縁組などで皇籍取得に同意する国民男性が実際に現れたり、それを受け入れて「養親」になられる皇族が出てこられたりする場面は、リアルには想像しにくいでしょう。幸い、机上の空論に終わる可能性が高いので、おそらく最悪の事態は避けられるでしょう。しかし、油断できない危ういプランであることは否定できません。

天皇陛下にすでにお子さまがいらっしゃるのに「女性だから」除外して、民間人の子孫でも「男性だから」天皇にするというプランは、皇室の尊厳を重んじる立場とは考え方が逆立ちしていませんか。そもそも旧宮家養子縁組プランなどで、「国民と苦楽を共にする」という高貴な精神が、果たして正しく受け継がれるのでしょうか。普通に考えて民間で生まれ育った人物に、そのような精神を期待するのは至難でしょう。それで、真の「皇室の伝統」は守られるのでしょうか。

天皇は「国民統合の象徴」なのに

また、このプランは国民平等の理念に反して、国民の中から特定の家柄・血筋=門地もんちの人たちだけが、ほかの国民には禁止されている皇族との養子縁組による皇籍取得が認められるという、明確な“差別”を持ち込むことになります。

そうすると、皇室の方々のお気持ちとはかかわりのない政治の判断による方策ですが、国民からは皇室の存在があたかも国民の中に不平等を持ち込む元凶のように見えてしまいかねない、という問題があります。それは結果的に、国民の皇室への素直な敬愛の気持ちを損なうおそれがあるのではないでしょうか。

なお、敬宮殿下が将来、もし即位されても、それで皇位継承の安定化が約束されるわけではない、という意見を見かけました。しかし、これは順序が逆です。これまでの男系男子限定という無理なルールを止めて、皇位継承の安定化を可能にするルールを確立すれば、その結果として直系優先の原則により、敬宮殿下が次の天皇として即位されることになる、という順序です。したがって、愛子天皇の登場は間違いなく安定的な皇位継承の指標となります。