中国のEVバブル崩壊を受けて広がる「次の覇権競争はSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)だ」との論調は正しいのか。マーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明さんは「SDVが次世代の本命というのは経済紙誌の煽りに過ぎない。むしろすでにSDV化は進んでおり、これは単なる正常進化でしかなく、日本は自らの強みを磨くことが重要だ」という──。
「日本の自動車メーカーは出遅れている」は根本的勘違い
最近、「近い将来すべての車は電気自動車(BEV)になる、日本メーカーは出遅れている」といった論調は、世界的なBEV需要の伸び悩みからほとんど目にしなくなっているが、そのかわりに自動車を取り巻く新しい言葉として「SDV」(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)をよく目にする。
SDVを制したものが今後の自動車業界を制する、という論調だ。そしてSDVで日本メーカーは出遅れているという記事をよく目にする。
果たしてそれは本当なのだろうか。
数年前、BEVで散々で遅れているといわれていた日本の自動車メーカーだが、現時点で見て最も正しい判断をしていたのは日本のメーカーだったことが明らかになり、拙速にBEVに舵を切った欧州メーカーは現在苦境に立たされているではないか。日本メーカーでも、もっともBEVに積極的だった日産は経営危機に陥っているではないか。
「次の時代のトレンドはSDV」は本当か?
さて、SDVだが、日本語にすると「ソフトウエア主体に作られた車」といったところか。
しかし明確に定義されている言葉ではないようで、さまざまな記事を読むとソフトウエアの更新で機能を付加・改善できることと、OTA(Over the Air)、つまり無線を通じてそのソフトウエアの追加や更新ができる、ということがポイントのように読み取れる。
もちろんそれだけでなく、車の機能すべてを統合してコントロールする新しいシステムも含まれるであろう。
しかし単にソフトウエアでコントロールされた車、という意味では、現在の車もソフト主体で動いていると言っても過言ではない。