「改正後に生まれた子」に限定される

この過程で、日本の保守系市民団体が、ローマ教皇やイスラムの聖職者、ダライ・ラマ法王が男性であることに対して国連が女性差別だとはいわず、日本の天皇にだけ指摘することは、差別的だと主張した。同種の問題ではないと反論する人もいるが、各国政府が宗教における男女差別に介入することは可能だから、このような指摘をしておくことには意味がある。

しかし、それ以上に、高森・島田両氏が間違っているのは、1990年代からヨーロッパにおいて王位継承についての男女差別撤廃が前進したなかで、新原則は「制度改正以降に生まれた子にのみ適用される」ということを無視していることだ(赤ん坊は例外)。

英国では2013年に、男子優先の長子相続(女王は可能だが、弟が優先)から男女問わず長子相続となったので、それ以降に生まれたウィリアム皇太子の3人の子では、第一子のジョージ王子の次は第二子のシャルロット王女、そして第三子のルイ王子の順番となっている。だが、チャールズ国王の兄弟では、弟たちのほうが姉のアン王女より先のままだ。

ノルウェー国王の第一子のイングリッド・アレクサンドラ王女が米国人の霊媒師と結婚して話題になったが、1990年の改正以前に生まれた子には適用されないので、弟のホーコン皇太子が次の国王だ。

生後、継承順位が変わることは極めて稀

スウェーデンでは、カール16世グスタフ王の長女ヴィクトリア王女のあと、カール・フィリップ王子が生まれた。当時は男子のみに王位継承権が認められていたが、王子が物心つくまでに継承順位を決めることになり、王子の誕生から8カ月後に性別に関係なく第一子が継承する制度に変更した。

その結果、継承順位第1位はフィリップ王子からヴィクトリア王女に変わった。これが、すでに生まれた子の順位を変更した唯一の例で、すでに成年に達している悠仁さまの順位を変更するのに類する非常識なことはどこの国もやっていない。

したがって、「他国の事例を参照しながら改正する」なら、悠仁さままでの継承順位は変更すべきでないことになり、この国連勧告を梃子に愛子天皇を実現しようという両氏の主張は前提が間違っている。