「健康のため」で不健康になる
たとえば、一気に大量のお酒を飲んで「急性アルコール中毒」になったとしても、それが原因で脂肪肝や脂肪肝炎が一気に悪化するといったことはありません。
むしろ、たいした量ではなくても、毎日毎日お酒を飲むほうが肝臓のダメージにつながりやすいんですね。毎日欠かさず多量の飲酒をして、それが10年も続けば、もう確実に脂肪肝や脂肪肝炎が進んでいると思って間違いありません。
同じように、甘い飲み物を何年にもわたって毎日習慣的に飲み続けていれば、肝臓は確実に弱体化していきます。
毎日欠かさず飲んできた乳酸菌飲料とか、毎日意識して飲んできた野菜ジュースとか、そういう日々の小さなダメージが積み重なって、いつしか肝機能をボロボロに破壊してしまうような大ダメージへとつながっていくのです。
小さなダメージを繰り返し受けていると、少し回復しかけたとしてもその回復途中でまた底のほうへ突き落とされることになり、一向に回復できないまま、日々ちょっとずつダメージが積み重なっていくことになります。
ダメージ回復の基準は48時間
具体的には、最初のダメージを受けた後、48時間以内に次のダメージがもたらされると、機能が回復しづらくなることが分かっています。48時間ですから、アルコールであれば飲んでから2日は空けたほうがいいということになるわけですね。
さらに、肝臓の病気が怖いのは、その小さなダメージの蓄積が症状として表に現われない点です。
症状がないと、どんなに状態が悪化していたとしても「悪くなっているという実感」を持てません。鍋の水に入れられたカエルは、少しずつ熱せられると状況の悪化に気づかないまま「ゆでガエル」になってしまうと言いますが、肝臓の場合もこれと同じように、悪化に気づかないまま少しずつ進行させてしまい、判明したときにはすでにかなり厳しい状態になっているケースが多いわけです。
雨だれのしずくでもいつかは石に穴をあけるのです。みなさんの肝臓はどうでしょう。ひょっとして、日々「しずく」のような小さなダメージが積み重なって、いつの間にかボロボロに弱った状態になってはいないでしょうか。