脂肪肝炎、肝硬変、糖尿病のリスク

とにかく、このようなダブル攻撃をもし毎日のように続けられたら、肝臓はたまったものではありません。肝細胞にはみるみる脂肪がたまり、肝臓がパンパンにふくらんでいってしまうでしょう。それに、脂肪肝だけでなく、脂肪肝炎、肝硬変、糖尿病などのリスクもみるみる高まってしまうはずです。

これは決して他人事ではありません。別に脅かすわけではありませんが、甘い飲み物を日々多飲している自覚があるのであれば、(肝臓はほとんど何の悲鳴も上げはしないのですが)すでに肝臓が脂肪まみれで瀕死も同然の状態に陥っていたとしても、まったく不思議はないのです。

でも、ちょっと疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。肝臓は7割切除しても残った3割の部分がたった3カ月で元の大きさに再生するような、驚くべき再生能力を持つ臓器です。それなのに、甘い飲み物の攻撃を受けたぐらいで、そんなに痛めつけられてしまうものでしょうか?

みなさんは「雨だれ石を穿つ」という言葉をご存じですか。これは「雨のしずく程度の小さな力でも、長い歳月をかけて繰り返し落ちていると石に穴をあける」ということを表わしています。

現在では「小さな努力でも根気よく続けていれば成功する」といったプラスの意味で用いられていますが、このことわざの語源となった中国の『漢書』では、もともと「小さな物事でも長年積み重なると大きな災いに発展してしまう」というマイナスの意味で使われていたそうです。

ボクシング
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肝臓が最も苦手な攻撃

私は、肝臓が悪くなっていくプロセスは、まさに(マイナスの意味での)「雨だれ石を穿つ」だと思っています。

どんな人も、いきなり肝臓が悪くなるわけではありません。脂肪肝はもちろん、脂肪肝炎や肝硬変の場合も、「甘い飲み物」「過食」「アルコール」などのちょっとした悪習が長年にわたって積み重ねられたことによって、じわじわと少しずつ状態が悪化していくのです。

まさに1滴1滴の雨だれがいつかは石に穴をあけるように、日々ちょっとずつちょっとずつ肝臓が蝕まれていくわけですね。

じつは、肝臓という臓器は、こういう「小さな弱い力」の連続攻撃によるダメージに非常に弱いのです。たまに強いパンチをガツンと食らってもわりと平気なのですが、その一方、毎日のように弱いパンチを繰り返し打たれると、そのダメージの蓄積がこたえて、てきめんに弱ってしまいやすいのです。

ボクシングであれば、それこそ「ボディへの弱いレバーブロー」を繰り返し打ち込まれて、その疲弊ダメージが蓄積したあげく、たまらずダウンしてしまうような感じでしょうか。