消費者にどう訴え、店へと導くか。そこには4つのポイントがあると考えています。

WAG代表 
エファップ・ジャポン学長 
伊藤美恵氏

1つ目は、最初に誰へどのようなメッセージを伝えるか。

私は企業の広報・PR業務を担うWAGという会社の代表として、これまでファッション業界を中心に多くの企業の話題づくりをお手伝いしてきました。その中でもっとも難易度が高く、達成感のあった仕事の1つが米アパレルブランド「FOREVER21」のPRです。

WAGとFOREVER21とのPR契約は2011年で3年目を迎えました。2008年の12月に米国本社で最初のプレゼンを行い、翌年の1月末に契約を締結。その3カ月後には日本1号店となる原宿店の立ち上げと、プレゼンからPR実施までの時間が記録的に短いクライアントでした。

「オープニングイベントはH&Mがやっていない新しい企画を実現させ、行列もつくってほしい」

これがFOREVER21からの最初のリクエストでした。当時、外資のファストファッションといえば先駆者的存在にH&Mがあり、FOREVER21を知っている人はファッション関係者でもほぼ皆無。私はまず、このブランドの特徴をファッション業界やメディア関係者に正しく認識してもらおうと考えました。

口コミの効果は最初の1人がどれだけ面白がって話すかで決まります。そこで私は日本で初めてとなるメディア向けの製品説明の場を、派手なイベント形式ではなく、WAGのオフィスでサンプルを見てもらうというシンプルなスタイルにしました。

理由は私自身が惚れ込んだこと。FOREVER21のロス本店を訪れた際、最新のトレンドをとりこんだデザインが驚きの安さで売られていることや、巧みなVMD(視覚的表現を重視した売り場づくり)で豊富な品揃えを消費者がわくわくするように見せていることに興奮を覚えました。

そこで確信しました。価格と品揃えという特徴をストレートに打ち出そう。しかも、大きな会場ではなく、小さなオフィスで、私の口から直接その魅力を伝えよう。これは正解でした。あるファッション誌の編集長は、FOREVER21のタンクトップを見て「これはいい! 10色まとめ買いするわ」と言ってくれました。