当時はちょうどH&Mのフィーバーが一段落した頃。メディアは“ポストH&M”を探していました。“ポスト”といわれると、二番煎じというイメージがつきまとってしまう可能性もあります。しかし、これを逆手にとってメディア関係者の心に訴えることで、雑誌やテレビ局のスタッフたちにも魅力が伝播し、露出を増やすことができたのです。

原宿店のオープニングにあたってはアーティストのBENIさんに楽曲を、作家の金原ひとみさんには小説を、それぞれFOREVER21をテーマに書き下ろしていただき、原宿や渋谷では広告のラッピングバスも走らせました。そしてオープン初日は2000人以上の列が生まれ、華々しい日本デビューを飾ることができたのです。

携帯で撮りたくなる仕掛けづくりを!

2点目は、「目」や「耳」に訴えること。これは、銀座2号店のオープン時の反省が教訓になっています。

渋谷を走るラッピングバス。原宿店には開店1年で500万人超が来訪。

「原宿店以上の行列をつくってほしい」。米国本社からのリクエストに対し、私は全国ネットのメディアに広告を流す正攻法を考えました。オープンが4月29日ということもあり、ゴールデンウイークで東京にやってくる旅行客もとりこもうと狙ったのです。

しかし、米国本社は首をたてに振りません。予算が限られていたこともありますが、一番の理由は日米の国土の差からくる考え方の違いでした。広大な面積を持つ米国では全国ネットのメディアを利用したところで、サンフランシスコの客がニューヨークまで足を運ぶことはない。だから、日本でもその必要はない、と。

メディアへの働きかけなど、限られた中でできることはやったものの、不安を抱えたままオープン当日を迎えました。予感は的中。思うような行列はできていませんでした。

すると、この状況を見かねた銀座店の責任者が先着プレゼントとして用意していた黄色の傘をさし、「FOREVER21銀座、オープンです!」と大声をあげながら、スタッフを連れて銀座の街を闊歩し始めたのです。WAGのスタッフもこれに続きました。

銀座を歩いていた人々は、この1行を見て「FOREVER21って面白そう。行ってみよう」と思ってくれたのでしょう。結果的に、オープン初日には原宿店の約2倍に当たる4万人超の来客がありました。