相手の印象がガラリと変わる「言い換え」
説得や交渉が必要な場面では、変化が欠かせません。今ある選択肢だけでは足りていないか、今のままでは決定できない、という状況であることが多いからです。でもだからといって次から次へと新しい選択肢を提示するのは現実的ではありません。今ある選択肢の中でどうするか、というのが本稿の大前提です。
そのための一つ目の技術が、「言い換え」です。ボトルにおよそ半分の水が入っているとします。「まだ半分も残っている」と捉えるのか、「もう半分しかない」と見るのか。同じ状況でも印象が違いますよね。
有名な実験があります。ある特殊な病気が流行すると、米国で600人が亡くなってしまう。そんな状況で、2つの対策が提示されます。
対策A:200人が助かる
対策B:3分の1の確率で600人が助かり、3分の2の確率で誰も助からない
このとき、7割以上がAを選んだのです。この伝え方を、変えてみます。
対策C:400人が死亡する
対策D:3分の1の確率で誰も死なず、3分の2の確率で600人が死亡する
お気づきの通り、どちらも元々の選択肢と同じ意味です。メリットやデメリットを違う言い方で表現しているだけです。ところが伝え方を変えただけで、今度は逆にD(先ほどで言うB)を選ぶ人が7割を超えたのです。
これを「フレーミング効果」と言います。ポジティブなことが書いてあるのならそもそものリスクを避ける方向で判断するけれど、「死亡」などネガティブなことが書いてあるならリスクを引き受けた上で、それを回避できる可能性をより重視するというものです。
「月々250円の節約」と「年間3000円の節約」では全然違う
説得や交渉においても、今ある選択肢はそのままに、どのように伝えるかで印象は大きく変わるのです。具体的な例をご紹介します。
①メリットに言い換える
・10%がマイナス評価→90%が評価しています
・クレームが減ります→顧客満足度が向上します
・コストが100万円削減できます→利益が100万円増加します
・無駄な工数が減ります→効率がアップします
・エラーが減ります→検品精度が向上します
②デメリットを強調する
・急げば間に合います→このままでは遅刻します
・メンテナンスで設備の寿命が伸びます→メンテナンスを怠ると、設備がすぐ劣化します
・7割が商品に満足しています→3人に1人がご満足いただけていません
・セキュリティを強化します→何もしないとサーバーへの攻撃のリスクが高まります
・スリムな体型を維持しましょう→肥満はさまざまな病気の原因に
③メリットやデメリットをより想像しやすく言い換える
・月々250円の節約→年間3000円の節約
・ビタミンCを2g配合→レモン100個分のビタミンC
・月額会員費450円→1日たったの15円
・離職率が15%→年間で130名が退職
・全品目のうち1割を値引き→500品目を値引き