「学歴ロンダリング」のように感じられてしまう

乱暴に言えば、「SFC」は、入学時点から「学歴ロンダリング」をしているかのように思われているのではないか。つまり、一部の人たちからは、「慶應」のステータスにふさわしくない、とみなされているのである。

その理由は、2科目で受験できるというだけではない。書類選考と面接試験を組み合わせた「AO入試」を日本で初めて取り入れたことや、慶應幼稚舎(小学校)をはじめ「一貫教育校」と呼ばれる、いわゆる付属校からの進学者が選ぶ学部、とは、ほとんど見られてこなかったことが背景にある。

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(写真=yuichi hayakawa/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

たしかに、内部からの進学者は4年前に急増した。それでも、「SFC」の定員は、2つの学部でそれぞれ425名ずつの合計850名である。増えたといっても、2020年時点で154名だから、他学部に比べれば、推薦枠の違いを鑑みても、まだまだ少ない。

変わった入学試験だけではなく、内部からの人気も高いとは言えない。そんな亜流感、もっとひどい言い方をすれば「ハリボテ感」を、どうしても拭えないのではないか。

社会性のない「京大」と、ありすぎる「SFC」

「SFC」のサイトには、「多様な学問領域における知識と実践的な問題発見解決能力を身に付けたSFCの卒業生は、企業等への就職はもちろん、高度な研究に取り組むために大学院に進学したり、自ら起業するなど、個性や才能を生かして様々な形で活躍しています」と書かれている。

詳しくは、そのサイトをご覧いただくとして、「いま話題のキラキラ広報の方」こと折田楓氏もまた、こうした「自ら起業するなど」して活躍している人に入るのだろう。「個性や才能」があるのも間違いない。しかし、その「生かし」方に自己顕示欲や承認欲求と直結した危うさが感じられる。

兵庫県知事選における折田氏の行為が、公職選挙法に抵触するかどうかは、現段階ではわからない。いずれにしても、彼女の今回の「炎上」は、本来ならば、社会との結びつきを担い、危機管理の手段であるはずのPR=パブリック・リレーションズを、「自己PR」と取り違えたところに由来するのではないか。そして、この取り違えこそ、「SFC」出身者の「華美な空気」の産物として、受け止められてしまったように見える。

「社会起業を通じ社会の様々な問題解決に取り組む卒業生が多い」と、大学側が評価する「SFC」出身者を、私個人も尊敬している。

私は、社会課題など、いまだに何だかよくわからないし、京都大学出身者らしく、「社会性」を身につけないまま生きてきたからである。近著『京大思考 石丸伸二はなぜ嫌われてしまうのか』(宝島社新書)で、自分の「病」を反省したが、「SFC」出身者は、逆に、あまりにも「社会性」を身につけすぎているのだろう。

折田氏だけではなく、「SFC」が「揶揄」されるのは、彼らが過剰なほどに如才なく、うまく立ち回っているように見えているからなのかもしれない。

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