デジタル空間の選挙運動と「伝統的憲法学」

曽我部教授は「従来、民主主義における自由な言論の重要性を重視する考え方に基づき、憲法学は選挙運動における表現の自由の制約に対して慎重な立場を取ってきた」と説明。むしろ、選挙においては伝統的な憲法学の立場からは、もっと候補者は自由かつ闊達に立場や政策を主張して良いのであって、むしろ、禁則事項の多い「べからず集」となっている公職選挙法もまた、不必要な規制として撤廃してしまうべきだという立場になり得ます。

しかし、デジタル空間における選挙運動の実態は、この伝統的な考え方への再考を迫っているようにも見受けられます。特に今回の兵庫県知事選挙では、YouTuberとして知られる立花孝志さんが自ら立候補しながらも、実質的に斎藤陣営を支援。対抗陣営であり有力候補であった稲村和美さんを積極的にネット上で攻撃する動画を多数掲載し、多くの視聴者を集めていました。