高島屋は2022年「高島屋ネオバンク」の提供を開始した。それ以外にも、金融サービスを展開し強化している。金融アナリストの高橋克英さんは「高島屋などの大手百貨店には“外商”の存在がある。メガバンクや大手証券会社に対して、富裕層ビジネスにおけるアドバンテージがある」という――。
新宿高島屋の外観=2024年5月17日、都内
写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ
新宿高島屋の外観=2024年5月17日、都内

高島屋が提供する個人向けの金融サービス

大手老舗百貨店の高島屋が、個人顧客向けに様々な金融サービスを提供しているのをご存じだろうか。専門員から資産運用の相談を無料で受けられるほか、高島屋独自のネット銀行もある。

2020年と2021年には、高島屋の旗艦店でもある東京・日本橋、大阪、横浜の3店舗にファイナンシャルカウンターを設置。資産運用や相続などについて、高島屋のFP(フィナンシャルプランナー)から、無料で相談を受けることができる。また、SBI証券との金融商品仲介により、新NISAや投資信託だけでなく、個別株や外国証券などにもアクセスすることができるという。

百貨店内にあるため、買い物ついでに気軽に利用でき、銀行や証券会社よりも身近に感じられることから、顧客にも好評だという。

商業施設での金融サービスといえば「イオン銀行」

商業施設での金融サービス展開というと、イオン銀行が真っ先に浮かぶ読者の方も多いのではないだろうか。イオン銀行は、862万口座を抱え、預金残高4兆6231億円、イオンカード有効会員数(国内)は3158万人に達している。また、マネックス証券と業務提携して2024年1月より金融商品仲介業務を開始したことにより、投資信託の取扱い本数が約300本から約1750本(2024年6月時点)に拡大しているという。

イオン銀行の店舗は全国に146カ所もあり、土日祝日は無論、年末年始やゴールデンウィークも含めて365日営業している。イオン銀行店舗は、イオンのショッピングセンターやターミナル駅近隣に展開しており、高島屋のケースと同様に、買い物ついでなど気軽に立ち寄ることができる(※口座数や店舗数などはすべて「ディスクロージャー誌2024」に基づく)。

現在、高島屋のファイナンシャルカウンターは3カ所しかないものの、ファイナンシャルデスクやWEBでの相談も行っている。顧客にシニア・富裕層が多い特徴があり、イオン銀行における「イオン経済圏」との関係と同じように、「高島屋経済圏」の一翼を担うべく、銀行・証券・保険・資産運用などの金融サービスの展開を進めているのだ。

中核となるのが「高島屋ファイナンシャル・パートナーズ」

高島屋の金融事業の中核となるのが、2020年に高島屋クレジットと高島屋保険が合併し誕生した「高島屋ファイナンシャル・パートナーズ」である。出資比率は、高島屋69.5%、クレディセゾン30.5%である。

クレジットカード業務と保険代理店業務に加え、同年から金融商品仲介業と信託契約代理店業を開始しており、後述するように、2021年にはソーシャルレンディング事業に参入、2024年3月には不動産ファンドに出資している。

高島屋ファイナンシャル・パートナーズは、クレジットカード、保険、投資信託、信託、ソーシャルレンディング、法人向けサービスまでを手掛ける総合金融サービス会社となっているのだ。