2022年に始まった「高島屋ネオバンク」
2022年06月には、高島屋は、住信SBIネット銀行といわゆるネオバンクである「高島屋ネオバンク(TAKASHIMAYA NEOBANK)」の提供を開始している。
ネオバンクとは、自らは銀行免許を持たず、既存銀行のインフラを利用し、金融サービスを主にスマホなどで提供するものだ。「高島屋ネオバンク」は、実態としては、住信SBIネット銀行「高島屋支店」となり、実際の預金の預かりや住宅ローンの貸付などは住信SBIネット銀行が行っている。銀行サービスを提供する住信SBIネット銀行側は、手数料収入と顧客層の拡大を得ることになる。
「高島屋ネオバンク」では、預金や振込などの銀行機能に加え、「友の会」のデジタル版にあたる「高島屋のスゴイ積立(スゴ積み)」で、年利15%相当の積立機能も提供している。顧客が1万円以上を毎月積み立てると、12カ月後の満期時には、高島屋各店で利用できる13カ月分の「お買い物残高」が付与されるもので、従来のシニア・富裕層顧客に加え、若年層にも利用者が広がっているという。
高島屋が「金融事業」を強化する背景
高島屋は、百貨店業、商業施設開発業に次ぐ第3の柱として金融業を強化しており、2027年2月期の金融事業の営業利益を、クレジットカード取扱高の増加や金融事業領域の拡大により、2024年2月期比15%増の53億円にする目標を掲げている。
なぜ、高島屋が金融事業を強化しているのだろうか。確かに足元では、三大都市圏にある店舗を中心に、高島屋をはじめ大手老舗百貨店は、インバウンドや国内外の富裕層による高額消費が追い風となっている。高島屋でも、2027年2月期の連結営業利益は2024年2月期比25%増の575億円を目指している。
しかしながら、国内市場は人口減少や少子高齢化の影響に加え、デジタル化などによる消費者志向の変化も進んでいる。実際、百貨店は、ネット通販、ファストファッション、ショッピングモールやアウトレット、家電量販店との競争にさらされている。そもそも「百貨店で買いたいモノがない」という声もあったりする。
こうした状況下、高島屋は、国内の百貨店業績を強化するだけでなく、中長期には、百貨店以外の商業開発や金融事業も強化するとしているのだ。計画では、営業利益に占める百貨店事業の割合は、2024年2月期の61%から2032年2月期には53%に縮小する予定だ。