検証部会トップの無責任ぶりが露呈
会見には検証部会長の安部計彦氏も同席した。火種となった最新の検証報告書の責任者である(連載第5回)。
安部氏は「匿名性は容認できない」という文言が第1回報告書から続いてきた言葉であることが、「今回、行政の人に確認してもらってはじめてわかった」と発言。過去の検証報告書に目を通しておらず、また、自身が代表者として名前を記した検証報告書の中身を把握していなかったことを悪びれずに話した。
だが、検証報告書は公文書にあたらないのだろうか。ゆりかごは日本の母子保健や福祉行政、女性の尊厳とこどもの権利を根本から問う装置として社会を揺さぶった。そのゆりかごの検証は歴史を記録することそのものだ。
ゆりかごの歴史は正しく記録されているのか
なお、熊本市は2020年に公文書管理条例を策定し、その目的を次のように記している。
本市の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、市民共有の知的資源として、市民が主体的に利用し得るものであることに鑑み、公文書等の適正な管理、特定歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって市政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、本市の諸活動を現在及び将来の市民に説明する責務が全うされるようにする
部会長が内容を把握せずに公表した検証報告書が公文書の体を成しているとは言いがたい。にもかかわらず、安部氏は「第6回検証報告書を取り下げるつもりはない」と断言。3年後に予定されている第7回検証報告書の作成にも部会長として携わるという。
次回はゼロから作成するというが、このようなずさんな検証報告書を作成した部会長が、歴史を記録する報告書の責任者として適任なのだろうか。
検証部会は熊本市が設置する社会福祉審議会の部会のひとつであり、検証報告書の作成過程では、熊本市が下書きをつくり、それに部会メンバーが加筆修正をしていた。また、会見で、児童相談所長と検証部会長が互いに発言を補足し合うなど、二者の連携する様子が見受けられた。
そうした事実からは、熊本市と検証部会はほとんど一体の関係性にあると考えられる。これでは検証部会に第三者性を期待することは難しい。さらに、安部部会長の失態は、過去の検証報告書の信頼性にも疑問を生じさせた。