「自分で考えて歩く」試行錯誤で空間認識が育つ
わが子を図形が得意な子にしたければ、親は子どもの手を引いて歩いてはいけない。「はじめてのおつかい」のように、子ども一人で目的地まで歩かせてみる経験をたくさんさせてみる。親は、後ろから付いて、見守ってあげればいい。もし道に迷いそうになっても、すぐに出てきてはいけない。「いま、こっちを右に曲がったのだから、次は左に行かなければいけなかったんだな」と子ども自身に気づかせることが大事だ。そうやって、失敗をくり返しながら、人は空間認識を身に付けていく。
空間認識というと、持って生まれたセンスと思っている人は少なくないが、実は失敗や、数々の試行錯誤を経験した上で、身に付いていくものなのだ。幼い頃にこうした経験をたっぷりさせてあげると、パズルやブロックといった遊びがより効果をもたらす。「パズルやブロックをやれば図形が得意になる」のではなく、まずその前段階で身体を使った体験をさせることが大事なのだ。
幼児期に特別なことをやらせる必要はない
こうして見ていくと、算数的な力を伸ばすために、幼児期に何か特別なことをやらせる必要はまったくないということが分かるはずだ。数を声に出して数えるのも、指で数えるのも、空間認識力を鍛えるのも、日常の暮らしや遊びの中で無理なくできることばかり。親はちょっと意識をする必要はあるが、子どもはただ親子で楽しい時間を過ごしているだけ。これが勉強だなんてこれっぽっちも思わないだろう。
幼児の過ごし方で大切なのは、これから始まる勉強の「下地」を作っておくこと。これに尽きる。そして、早くから勉強っぽいことをさせて、子どもを勉強嫌いにさせないことだ。「わが子の将来のために」と、どうか間違った手段に走らないようにしてほしい。
(構成=石渡真由美)