松下幸之助も簡単にはなれなかった「素直な心」
「天地自然の理法はどこにあるかということは、各人各人のしみ出るような体験からつかめるともいえますが、それだけでなく素直な心を培養するという心がけでものを見ていけば、天地自然の理法というものも分かってきて、その人の動くところすべて理に適した動き方をするようになると思います。学問にとらわれず、知識にとらわれず、権力にとらわれず、地位を利用するような動きもしなくなる。すべて自然の理のままに、正しい行いがだんだん高まっていくということになると思います」
経営は「本来」成功するようにできているのに、「現実」にそうならないのは、結局のところ人間が「素直な心」を持っていないからだというのが、幸之助の見方だ。経営の基本は「人知」を過信することではなく、「素直な心」で「自然の理法」に従うことだという幸之助の考え方から理解できよう。
しかし、人間誰しも「素直な心」にはなかなかなれないものだ。幸之助自身もそうだった。それゆえ幸之助は、「素直な心」の大切さを、晩年まで熱心に説き続けたのである。