旧財閥グループを猛追する「野武士集団」

伊藤忠商事は三菱商事、三井物産とともに年間売り上げで10兆円を超える、「3大商社」の一角を占める存在です。三菱、三井がともに旧財閥系であるのに対して、伊藤忠は独立系です。その成り立ちの違いから、得意分野も異なっています。財閥系2社は古くから資源・素材分野に強く、財閥グループの結束を背景として業績を伸ばしてきたという歴史があります。

一方で伊藤忠商事は、江戸末期1858年の創業来、祖業の繊維を手始めに発展したBtoCビジネス中心での独立独歩路線を歩み、現在では生活関連消費材やDX分野を強みとしています。同社が最新の中期経営計画でも、「消費者からのニーズをくみ取ったマーケットインの発想による事業変革に取り組む」と宣言し、古くからの大手商社を象徴する「プロダクトアウト」文化を否定している点も、大きな特徴であるといえるでしょう。

このように旧財閥グループという大きなよりどころを持つ三菱商事、三井物産とは一線を画し、“野武士集団”ともいわれる伊藤忠商事からは、彼らに対する強い対抗心が伺えます。古くから2社に売上規模で後塵を拝しその背中を追いかけてきた経緯からも、並々ならぬライバル心があるのでしょう。そのような中で同社は、2021年3月期に純利益、株価、時価総額で2社を上回り、念願の三冠達成となりました。しかしながらコロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻の影響で資源価格が急騰。この分野に強い財閥系への追い風となって、翌年には再度逆転され引き離されるという憂き目にあっているのです。