ただ、現在、功刀部長は文部科学省の脳科学研究戦略推進プログラムの一環で、うつ病患者と健常者の食事記録と血液検査記録を収集・分析中だ。その研究からわかってきたことを、以下に少しだけ紹介させていただく。
●必須アミノ酸
……食物からとる必要のある9種類の必須アミノ酸のうち、うつ病患者ではメオチニンの低下傾向が見られた。
●脂肪酸
……予想に反し、うつ病患者ではn-3系多価不飽和脂肪酸ではなく、n-6系多価不飽和脂肪酸が減少。
●ビタミン
……血中ビタミン濃度に大きな差は見られなかったが、うつ病患者では葉酸値が低い傾向があった。
●緑茶
……うつ病患者では飲む量が少ない。
●コーヒー
……うつ病患者では飲む量が少ない。
欧米の先行研究と比して同じ結果もあるし、違う結果もある。それぞれがなぜそうなのか、栄養や食品と日本人のうつ病との関連性の解明はこれからだ。今後、国内で同様の調査を行い、違うデータが出てくる場合もありえるだろう。右記はあくまで、1つの調査の結果例であり、「だから、この食品がうつ病の予防・利用に効く」という話には結びつかない。
ただし、次の調査結果については、現段階でも参考にしていい。
●肥満度
……うつ病患者では肥満傾向があり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)低値、中性脂肪高値などメタボリック症候群との関連が示唆された。
「うつ病の人には痩せているイメージがあるかもしれませんが、実際は逆のほうが多いんです。ストレスを晴らすための過食で、あるいは運動不足のせいで肥満になってしまう。食べ物は、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維といった栄養素をバランスよく適量に、しかも規則正しい食事でとることが大切です。生活習慣病の予防と同じだと考えてください」と功刀部長は言う。
要は、何を食べればうつ病に効くといった発想ではなく、ちゃんとした食事を日々きちんととって、生活習慣を改善していくことがメンタルヘルスを保つ大前提ということなのである。