99年はまさにターニングポイント。80年の創業以来、同社は訪問販売を一切禁止とするなど、既存ディーラーのマーケティングのノウハウを破壊してきたが、このときさらに何が何でも「営業=売らんかな」という従来型の価値観を完全に捨て去るという勇気ある決断をしたのである。顧客満足度11年連続1位などの快進撃は、いわば、「売ろうとしないで、売れる」というネッツトヨタ南国ならではのポリシーが功を奏したのだ。

同社は朝礼を貴重な情報共有の場として、大切にしている。前日の販売実績を詳細に報告しあうのだ。担当した営業従業員が、顧客の初来店日、家族構成、勤務先、ニーズは何だったかなどを事細かに報告、分析する。

販売実績を拍手して賞賛することが朝礼の目的ではない。「何が顧客の心を購買に導かせたか」を探るのだ。自分の顧客名簿に似た家族構成や、同じ問題を抱えている人はいないのか。同じ勤務先の人であれば、同僚のクルマの購入を見て刺激を受けるのではないかなど、従業員が仮説と検証を繰り返していく手がかりなのだ。門田は言う。

「朝礼はいつも長く、時には120分にも及びます。2010年、自動車補助金が出ることをテレビCMでしつこいぐらいに“こども店長”が告知していました。まさかお客様の中にその制度を知らない人がいるとは誰も考えなかった。

しかし、ある日の朝礼で、その補助金制度をまったく知らないお客様がいて、その制度をお教えしたら契約に結びついたという報告があったんです。みんな大慌てで自分の顧客名簿の中にそのような人がいないか入念にチェックしました(笑)」(門田)

11年、自動車業界全体が補助金制度の追い風を受けたが、その中でもネッツ南国は突出して売り上げを伸ばしている。信頼する同僚同士の情報共有の勝利である。