着手日の設定で仕事をスムーズに開始
行動管理手帳の内容を共有することも大切です。私は「グーグル・カレンダー」を利用して自分のスケジュールを全社員に公開しています。また、社員には自分たちの行動管理手帳の内容を「全員メール」で送ってもらっています。私は毎朝出社すると、必ずそれらを確認します。
実は、そうすることは社員にとって大きなメリットがあります。上司である私から仕事を“ムチャ振り”されなくなるからです。目一杯仕事が詰まっているのがわかっていたら、「今日は新しい仕事を振るのをやめておこう」という気持ちになります。それで社員は自分のペースを乱されることなくスムーズにタスクをこなしていけるようになるのです。
とはいえ、顧客から電話がかかってきて、急用を頼まれることもあるでしょう。そうした“突発の仕事”をした場合、私は手帳に「したことリスト」として、その内容をメモしておきます。すると、自分の行動実績のすべてを網羅できて、各仕事にどれだけの時間がかかったかを把握することが可能となります。そして、次に同じような仕事をする際の目安ともいうべき“標準時間”を測定できて、仕事の精度アップにもつながります。
さらに、行動管理の工夫として「着手日」も設定しています。英国の歴史・政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソンは「仕事は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」と指摘しました。夏休みの宿題をギリギリまで手をつけない子どもがいます。その結果、手に負えないくらいの量の宿題に膨らませてしまうようなことです。そこで、そうならないように締め切り日から逆算して着手日を設定します。
私が本を執筆する際には、編集者と締め切り日の約束を交わします。そうしたら、その2カ月前に着手日を設定し、まず「目次」と「前書き」から始めることを手帳にメモします。そうやって10ページ分なり、20ページ分なりを進めておけば、本文の原稿執筆もスムーズに進みます。
手元にある1年前、2年前の行動管理手帳に目を通していくと、ある顧客に対して自分がどのようにアプローチし、信頼関係を築いてきたのかがわかります。それは自分自身の“成長の記録”でもあるわけです。しかし、成長には「もうこれでいい」という到達点はありません。ですから、明日、将来の行動管理を徹底するため、今晩も手帳を開くのです。
大学時代にベンチャー企業の創業・運営に参画し、卒業後は大手通信事業会社で新規事業開発をメーンで担当する。その後、教育人材コンサルティング会社の代表取締役を経て、ハイブリッドコンサルティングを設立。著書に『25歳からの仕事ルール』など。