「人物評価は紙に頼るな」ということをここで肝に銘じないと、人脈づくりの点でも“Japan bashing”から“Japan passing”、さらに“Japan nothing”に転落しかねません。

そこで、私の専門分野がものをいいます。人間の心理と自己表現との間を研究する「自己表現のサイエンス」です。人が「ことば」で何を表現し、ことば以外の表情・仕草・発声などの「非言語的要素」で何を表現しているのか。特に、ビジネスパーソンのすべての表現には、なんらかの「意図性」が隠されています。人間は自分の意図によって、見せたいところを拡大し印象づけながら、人に会っているからです。

それなのに、最も重要な情報発信媒体である「その人」を見抜かずして、どうして人脈ができるでしょうか。

「“その人”を読み取れ。しかも、短時間で」

これが人脈づくりの鉄則です。

では、「短時間」とは何分か? 何分など、とんでもない話です。

「2秒」です。

これには、私が行った実験の根拠があります。

私の日本における実験のヒントになったのが、アメリカの心理学者ティモシー・ウィルソンの「適応的無意識」(Adaptive Unconscious)の考え方です。

彼は、例えば私たちは、自分に向かって突然トラックが走ってきた場合、右によけるか左によけるかなどと、のんびり考えている暇はない。その瞬間に、過去のあらゆる経験値が作動し正しい方向に避けている。そのときの神経を「適応的無意識」と名付けたのでした。そして、人間が1秒間に視覚から受け取る情報が1万4000要素ほどあることも報告しています。

これを実験したのが、ハーバード大学の心理学者ナリニー・アンバディです。学生たちに、教師の授業風景を撮影した音声なしの動画を10秒間見せただけで、彼らは講師の力量をはっきり見抜いたというのです。動画を5秒に縮め、2秒にしても同じだということもわかりました。