“Mr.はずれクジ”を15メートル先から読む。ヒントは「ズレ」

前述のように、集中ができない人は往々にして、私が“Mr.はずれクジ”とあだ名をつけている人につかまってしまいます。

例えばパーティ会場で、パワーがあって影響力のある人、その日の主人公などは大体会場の前方、ひな壇近くやマイクの周辺に集まっています。そこにはライトが当たり、その人々の輝く笑顔、活力のある姿勢などが見えて、たくさんの人が集まっています。

一方、会場の入り口などにポツネンと退屈そうに立っている人がいます。あるいは、会場中央に置かれた食事に群らがって、ひたすら口に食べ物を運び続けている人もいます。

もし、あなたがそんな人たちのそばに寄っていったりすると、暇つぶしの餌食になること請け合いです。

また、相手からパッと名刺をいただいて、「おやまあ、これはよく知っている会社の部長である。きっと素晴らしい実力をお持ちだろう」と思ってしまったあなたは、そこで大きな間違いを犯しています。

「部長」と名刺の肩書に書いてある、その人をよく見てください。

なぜ、そんなふうに食べてばかりいるのでしょうか? なぜ、彼のまわりに誰一人いないのでしょうか? なぜ、彼の着ているスーツのジャケットの肩は丸くなり、ヒジの周辺に横皺が寄ったままなのでしょうか? なぜ、その人は猫背のように背を丸めているのでしょうか?

答えは簡単です。私たちの心の中に、「今ビジネスが上り坂であり、おもしろくてしょうがない」というポジティブな気持ちがあれば、それはまず「背骨」に出ます。背骨は1本の真っ直ぐな骨ではなく、頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個などのつながりです。人脈と同じように、骨も脊椎の「骨脈」なのです。気を抜くと、この骨脈はぐにゃりと曲がります。「会社がうまくいっていない」「今年いっぱいで定年だ」などと考えていれば、自然と背骨が曲がります。だから、名刺が表しているパワーと背骨が表しているパワーが真逆なのです。

これが「ズレ」です。

姿勢については幸い、相手との距離が15メートル離れていても見抜くことができます。「なんだか元気がなさそうな人だ。もはや落ち目だろう」といった具合です。

さらに、5メートルまで近寄ったところで、相手の顔の表情を詳細に読み取ることができます。約30ある「表情筋」は、気持ちが活気に満ちているときにはよく動くのです。

私の実験室でのデータによれば、二者間の対話中での表情筋は、平均的には1分間のうち28秒動いています。しかし、落ち目であったり、体が疲れていたり、前途になんの希望もないと、無表情(専門的には「ニュートラル」と呼びます)のままの時間はどんどん長くなり、1分間のうち40秒もまったく動かないこともあります。

こんな人の名刺を有り難くいただいて長話をして、なんの役に立つでしょう。これが“Mr.はずれクジ”の典型です。体の姿勢、表情によく表れます。もちろん、歩幅にも出ます。トボトボと小さな歩幅で歩いている人には、未来がありません。

これも私の実験によると、日本人の平均身長の男性で、歩幅60センチがひとつの目安となります。60センチ、あるいは、それ以上でスタスタ歩いているか。それとも、お年寄りや子どものように小さな歩幅でトボトボと歩いているか。これもまた、“Mr.はずれクジ”を見抜く条件になります。