耐震工事で最優先すべき工事は足元部分の補強です。古い住宅では、土台や柱の脚部が劣化している可能性が高いからです。私は外壁の下部をはがし、腐朽した土台や柱脚を交換します。さらに柱と土台を金物で固定し、構造用合板を張って剛性を高める工事をして、料金は100万円ほどになります。

(PANA=写真)

予算があれば壁の補強です。10万円ほどかかりますが、この場合も2階の壁より1階の壁を優先します。さらに余裕がある場合には床面の補強など建物全体をバランスよくし、剛性を高めるための補強を行います。

限られた予算なら、その家で最も効果的なポイントを考えます。2階建てならば、階段を利用する方法があります。階段は「ささら桁」と呼ばれる板で段板(踏み板)を支える構造です。このささら桁は3寸角の筋かいに匹敵する断面を持ち、地震に対して強い抵抗力がありますが、階段は1階の床の上にのってる状態が多く、地震では滑って動きます。そこで床にしっかり止めてやれば家全体の耐震力が増します。

浴室や台所が老朽化して設備交換などリフォームをするときが構造補強を行う絶好の機会です。取り替える壁を構造用合板にしたり、釘の打ち方など工法や素材を替えるだけでも家の強度が増し、工事費も低く抑えられます。

意外に知られていないのが市区町村の耐震診断や補強工事の補助内容です。基本的に81年以前に建てられたものが対象ですが、例えば東京都は工事をすれば固定資産税や都市計画税が一定期間、全額免除されます。要件を伴う場合が多いですが自治体の窓口に問い合わせ、上手に活用しましょう。

※すべて雑誌掲載当時

(写真=PANA)
【関連記事】
わが家の耐震工事、最低いくらかかるのか?
母親の出番!「緊急バッグ」は家庭用品で
「地震保険」イザというとき、どれだけ助かるか
首都地震「想定死者1万人超」が現実離れしている理由
ドキュメント・帰宅難民 35キロの旅