車は水没50センチで身動きが取れなくなる
東日本大震災のニュース映像で、車が次々と波に呑まれていく様子に衝撃を受けた人も多いだろう。車の水没は人ごとではない。台風やゲリラ豪雨で河川が氾濫したり、道路が冠水する恐れもある。万が一、車で移動中に水に浸かったらどうすればよいのか。
「水没50センチで車は身動きが取れなくなる」
そう指摘するのは、防災システム研究所の山村武彦所長だ。
「50センチの高さになるとタイヤに巻きあげられた水がエンジンに入ったり、電気系統がショートしたりしてエンジンが動かなくなります。電気系統がやられるとパワーウインドーもダメ。窓も開かなくなります」
水かさが50センチ以下に見えても、強引に突っ込んではいけない。冠水した道路は水深がわかりにくく、見た目以上に深かったというケースがありうる。冠水したら迂回が原則だ。
さらに水かさが増すと、ドアも開かなくなる。内側からドアを押す力より、外側の水圧のほうが強くなるからだ。
ドアも窓も開かなければ、車と一緒に流されていくしかないのか。数多くの要人警護を手掛けてきた危機管理研究所の久保正樹氏は、車が水没したときの心構えを次のように説明する。
「仮に水かさが車の屋根より高くなっても、車内には空気が残っているので、すぐに沈んだりはしません。エアコンの送風口などから少しずつ水は流入してきますが、完全に水没するまで5~6分の猶予がある。まずは慌てずに状況を把握することが大切です」