文字数稼ぎにしかならない「国会用語」

「できるだけ早くと思って、今しばらくお時間をいただければと思っていますが、鋭意作業をして、できるだけ早くというふうに考えてございます」

もしもビジネスの場面で、営業担当者が得意先にこう発言したら、成約は一気に遠のいてしまうでしょう。内容もさることながら「……というふうに」「……てございます」が気になります。国会では、文字数をかせぐだけのような言葉が多すぎるのです。

「……についてご質問をいただいたというふうに考えてございます」
「実施することが可能であるというふうに認識してございます」
「しっかりと検討してまいりたいというふうに考えてございます」

特定の人物の言葉癖というよりも、伝統的な国会用語のようなものだと見受けられます。もしそうだとしたら、流されすぎです。

国会議事堂
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国語に関する世論調査」(令和元年度/文化庁)で「規則でそうなってございます」という表現について「気になる」という回答は81.5%でした。国民の大半が違和感を持っていることが分かります。「ございます」は「あります」の丁寧語です。つまり、「規則でそうなってございます」の敬語を省くと「規則でそうなってあります」に戻ってしまうわけです。

正しくは「います」の丁寧語「おります」を使い、「規則でそうなっております」とすべきです。

また、冒頭の「考えてございます」の前にある「というふうに」も国会で多用される表現のひとつ。バリエーションで「と、こういうふうに」もあります。「と」で済むところを「というふうに」とすれば、発言に時間もかかる上、焦点がぼやけます。

ちなみに冒頭の発言を口にしてみると13秒。要約し「できるだけ早くと考えております」とつぶやいてみたら、3秒もかかりませんでした。言葉は思考をつくるもの。まだるっこしい表現や誤用、ぼかす表現が、国の政策をつくる場にふさわしいとは到底思えないのです。シンプルに言葉を使うほうが思考もクリアになり、議論も尽くせるに違いありません。

「形になります」はどんな意味で使われているのか

「お取り寄せができない形になっております」
「後日あらためてご案内をさしあげる形になります」

こんなふうに「……できない形になっております」「形になります」と聞くと、思わず「それ、どんな形? 丸いの? 四角いの?」と言いたくなります。商品を取り寄せられないこと、何かをできないことを客に伝えるときなどによく使われている表現ですが、なぜこのような言い方なのか、不思議でなりません。

「形」とは、「形式やルール」という意味なのでしょう。仮にそうだとすれば、一つ目は「お取り寄せができない決まりになっている」という意味になります。言葉自体は丁寧ですが、客に対して有無を言わせぬ強さがあります。まるで言葉の防護服のよう。鎧を脱ぎ捨てて、客に伝わる真摯しんしな表現にするにはどうすればよいでしょう。