タロとジロの「遺骨」は行方不明

一方で、ジロは「奇跡の生還」の1年半後、南極で死亡した。南極での食糧事情の影響もあり、死亡時のジロはかなりやせ細った状態であった。ジロは剥製にされるために冷凍保存されて、無言の帰国を果たす。現在、国立科学博物館の忠犬ハチ公の剥製の上に、ジロの剥製が置かれている。

ジロ(上)とハチ(下)。国立科学博物館にて
撮影=鵜飼秀徳
ジロ(上)とハチ(下)。国立科学博物館にて

なお、タロとジロの剥製は過去に2度ほど、企画展の展示のために「再会」を果たしている。だが、日本で栄養状態もよく、毛並みもツヤツヤのタロに比べ、極地で死んだジロは対照的に貧弱で、その違いに心を痛める来場者も少なくなかったという。

タロとジロの「遺骨」については現在、行方不明である。以前、筆者が国立科学博物館にジロの墓の所在を確かめたことがあったが、「当時の引き継ぎノートなどに記録はなく、わからない。そもそもジロの遺体は引き取り手がなかったので国立科学博物館に運ばれてきた」とのことだった。

タロとジロの遺骨が埋まった墓は不明だが、先述のように供養塔は各地に造られ、弔われている。南極・昭和基地では13頭の犬の慰霊のための仏像がすぐに建立され、慰霊祭が実施されている。

また、東京タワーが完成した直後に15頭のカラフト犬像が設置された。こちらは慰霊碑というより、タロ・ジロの生還を記念して作成された顕彰碑の要素が強い。像は2013(平成25)年に、国立極地研究所へと移転している。

さらに、北海道稚内市には樺太犬供養塔と南極観測樺太犬記念碑がある。稚内は犬ぞりの訓練地であり、稚内周辺から多くの南極犬が選ばれたことから、モニュメントを建立することになった。記念碑にはブロンズの樺太犬が立っており、そのモデルはジロという。

一度、各地の南極犬に会いに行ってみてはいかがだろう。

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