タグのブランドが「共感・賛同」の証し

また豊島では、このプロジェクトにひもづく画期的な取り組みを行っています。それはブランドショップなどの店頭で販売される10%以上オーガニックコットンを使用したORGABITS商品にオリジナルのタグをつけ、そのタグ1枚ごとに寄付がされるという取り組みです。

寄付金は、インドのコットン農家支援などを行っている団体に寄付されます。

また、入院中の子どもたちに笑顔を届けるクリニクラウンプロジェクト、東日本大震災の被災地である南三陸地方で桜並木をつくるプロジェクトなど、環境や社会のために「ちょっといいコト」を行う団体の多岐にわたる活動支援にも使われています。

タグは、その商品を製造販売しているブランドが、これらの活動に共感、賛同したブランドであることの証明にもなるのです。

木綿のタオルと綿花
写真=iStock.com/studiocasper
※写真はイメージです

2024年6月末時点で、約150件にのぼるアパレルブランドが参加し、約1150万点のアイテムが生産される日本最大のオーガニックコットン普及プロジェクトにまで発展しました。

不完全だからこそ浸透する

ORGABITSで100%完全なオーガニックを使用することにこだわったら、ここまで参加企業数やアイテム数を伸ばすことは不可能だったでしょう。

100%オーガニックが難しい理由のひとつは、コットンの原材料である綿花の有機栽培には手間がかかることにあります。

虫がつかないように綿花畑周辺に防虫効果のあるハーブを植えたり、雑草や害虫も一つひとつ手作業で取り除いたりなど、とてつもない労力と時間を費やします。

そのためオーガニック綿花の生産量も、現時点ではまだ世界中の綿花生産量の1%程度。価格もオーガニックでないコットンより、はるかに高額にならざるを得ません。

また、100%完全オーガニックにこだわるのであれば、アイテムの生地はもちろん縫製ほうせいの糸もオーガニックであること、生地や縫製用の糸を色染めする染料も化学染料を使わないオーガニックであることが求められます。

しかし、染料までオーガニックを貫くとなると、有機栽培された植物由来の染料くらいしか使えなくなります。草木染めと呼ばれるものですが、草木染めは色あせしやすく、少し濡れただけでも色落ち・色移りしてしまうので、用途が限られます。

そのため、基本的には色染めをしない「生成きなり」の製品しかつくれなくなり、カラー展開ができず、ファッション性に欠ける製品ラインナップになってしまいます。

これでは、一部のオーガニックにこだわりの強い方には受け入れられても、多くのお客さんに買ってもらえる商品にはなりません。そうなると、ORGABITSのオーガニックコットンを、もっと手軽に、たくさんの人に広く届けるという第一の目標とは逆方向に向かい、本末転倒の結果になってしまいます。

豊島では、完全ではないオーガニックであることと、なぜ不完全なのか、その根拠をORGABITSの専用サイトで丁寧に説明し、誠実に公表したことが共感の輪を広げることにつながりました。

その結果、賛同ブランドが150以上、それらのブランドから生み出されているアイテムが1150万点以上にのぼりました。この数字は、小さいこと・不完全なことでも見える化して誠実に伝えることで、どれほど大きな価値を生み出せるか、その証左でもあるのです。