伝えないことがリスクになる時代

しかし、ビジネス社会においては、自社の取り組みを世の中にきちんと伝えないことは大きなリスクになります。完璧主義を貫き、完璧な状態になるまで黙っていることはリスクになるのです。

一方で、いまできていることを、ありのままに誠実に、いち早く伝える姿勢は、多くの共感や賛同を呼び、価格以上の価値を生み出します。

本稿では同様に、「小さくて」「不完全」だけれど、それを誠実に、透明性をもって伝えたからこそ付加価値になり得た例を紹介していきます。

プラスチックから紙へ「包装紙のベスト」を率直に話す

「外装の紙化」で広がる応援の輪
ネスレ日本『キットカット』

赤い文字のロゴでおなじみの『キットカット』。ウエハースをチョコレートでコーティングしたこのお菓子は、まさに定番ロングセラー商品です。

『キットカット』が世に出たのは、1935年のイギリスです。日本に初めてお目見えしたのは、1973年。以来、半世紀にわたり、幅広い層から根強い人気を得ています。

ネスレ・フランス本社ビル
写真=iStock.com/Jean-Luc Ichard
※写真はイメージです

この『キットカット』の販売元であるネスレ日本の社長兼CEO(当時)が、2019年8月1日、ある記者会見を開きました。「2019年9月から『キットカット』の外装をプラスチックから紙に変え、プラスチックを年380トン削減する」と発表したのです。

外装を変えるのは大袋タイプ(個包装商品が12~14枚入ったタイプのもの)のうちの5種類で、『キットカット』国内出荷量の大半となります。これにより年間380トンのプラスチック削減が実現されるのです。

当時の社長は記者会見で、「紙は燃やすと二酸化炭素が発生するが、一番の問題はプラスチックが海に流れ出て、それを魚が食べ、人間にも影響が出る可能性があること。

プラスチックがごみとして外に出ることを防ぐのが先決。外装を紙にすることで、100%の解決にはならないが、現在とり得るベストの方法である」と語っていました。