糖質だけでなくタンパク質も摂取すべき
練習後に筋肉のグリコーゲンをできる限り早く回復させる上で、糖質の摂取は必須です。さらに、タンパク質を併せて摂取することでグリコーゲンの回復は早くなります。したがって、筋肉量を増やすことを強く望まない陸上競技の長距離選手であっても、毎回の練習後にタンパク質を摂取することには大きな意味があります。特に、次の練習まで数時間しかない場合、「糖質+タンパク質の最強タッグ」は威力を発揮するでしょう。
したがって、部活の練習後は「スナック菓子・ジュース」ではなく、「おにぎり・牛乳(ゆで卵やプロテインパウダーでも良いでしょう)」や「肉まん・牛乳」の組み合わせが良いのです。
試合前にトンカツを食べるのはオススメしない
大事な試合を翌日に控えた場合、皆さんは何を食べるでしょうか? 縁起をかついで「カツ(勝つ)」を食べるという方もいらっしゃるかもしれませんが、スポーツ栄養学の観点からは糖質中心の食事がオススメです。
トライアスロンやマラソンなどレースが長時間に及ぶ競技の前日には、「カーボパーティー」と呼ばれるイベントが開催されることがあり、参加者はパスタなどを食べながら懇談します。「カーボ」とは「カーボハイドレート(carbohydrate)」の略語で、炭水化物や糖質という意味です。
なお、炭水化物というのは、吸収されてエネルギー源となる「糖質」と消化吸収されずにエネルギーとはならない「食物繊維」の総称です。腸の調子を整える食物繊維は重要ですが、試合前の食事ではレース時に直接エネルギー源となる糖質を優先します。糖質はご飯、麵類、パン、いもなどに豊富に含まれています。
筋肉に含まれるグリコーゲンは、長時間運動の大切なエネルギー源です。また、血液中のブドウ糖も筋肉に取り込まれてエネルギーとして使用されます。一方、運動時間が長くなると血液中のブドウ糖が次々と筋肉で消費されることから、次第に血糖値が低下します。
ブドウ糖は脳のエネルギー源でもありますので、血糖値が低下すると集中力が低下し、瞬時の判断能力も低下します。これを防ぐのが肝臓に蓄積されたグリコーゲンです。長時間運動中に肝臓のグリコーゲンを分解して血液中にブドウ糖として放出することで、血糖値の低下を防いでいるのです(図表3)。