逆転の発想

片岡さんの第一子が生まれる前後1カ月間、自分の実家にいると、「こっちにも1カ月いなさい」と義母。仕方なく、生まれたばかりの長女を連れて義実家へ行き、部屋の隅で授乳していると、義父がわざわざ片岡さんの前まで移動して見にくる。

赤ちゃんに授乳する母親
写真=iStock.com/Satoshi-K
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夫に言っても、「おっぱいではなくて、初孫がゴックンゴックン母乳を飲む所を見たいだけだよ」と取り合ってくれない。

出産後、母乳100%で長女のお腹を満たせていた片岡さんだったが、義実家に来てから精神的なストレスのせいか、母乳が出なくなり、粉ミルクを足すことに。

それから3年後、片岡さんは2人目を妊娠。そしてやっと夫は元の部署へ戻れることに。片岡さん夫婦は田舎から街なかに引っ越すと、ローンを組んで中古住宅を購入した。

この時から片岡さんは発想を転換。

「七五三とか、誕生日とか、ひな祭りとか、行事の度にうちが義実家へ行くのではなく、義両親を私の家に招待すればいい!」

義実家から片岡さんの家までは電車で2時間ほどかかるが、これがうまくいった。義両親は3歳の長女を喜んで相手し、その間に片岡さんは家事をするなど、マイペースに過ごすことができたのだ。

この成功体験から、次女出産後は、母親でなく義母に来てもらった。

「母に来てもらうと、夫との関係に気を遣いますが、義母ならそれがありません。義母は『床上げまでの三週間は、産後の体力回復のために寝ていなあかん』と言い、産後1カ月間、我が家の家事をしてくれました」

義弟の結婚

長男の夫には、3歳離れた弟が1人いた。

片岡さんに長女が生まれると、義弟は百貨店のおもちゃ売り場で、よく高価なぬいぐるみを買ってきてくれた。片岡さんが結婚した8年後、義母が勧めるお見合いで義弟が結婚した。

結婚する前、義妹は義母に言った。

「私、小さい頃お祖母ちゃんと一緒に住んでました。だからお義母さん、一緒に住みましょう!」

この一言が、義母の運命を変えた。

「よし! では一緒に暮らせるように、この家を建て替えよか。あんたらの好きなように設計したらいいわ。お金は私が出したる!」

この日から義母は、

「うちは長男ではなく、次男が跡継ぎです!」

と親戚中に言って回るように。

「おかげで長男の嫁である私の上にのしかかっていた重圧がなくなり、『私が一人になったら、頼むな』という呪縛からも解放されました。私は家をもらうより、断然自由のほうがいいと思っていました」

義父は家の建て替えが始まるとき、義妹に言った。

「では、私にもしものことがあったら、ばあさん(義母)のことを最後までよろしくお願いしますよ」

義妹は優しく頷いた。