自分のやりたい仕事を回してもらう

やりたい仕事が回ってこなければ、報・連・相の工夫でリーダーシップを発揮してはどうでしょう。上司=リーダーではない。上司は会社から与えられた役割にすぎないので、部下がリーダーシップをとってもいいのです。

大手電機メーカーの開発部でサーバーのCPUを巡り事業部長が部下と対立しました。事業部長は役員から自社CPUの採用を厳命されており、部下は性能で優れるA社のCPUの採用にこだわっていた。ある日、部下が上司を飲み屋に引っ張っていきました。そこにいたのはA社の社長。部下は上司に相談せずに会合をセッティングしたのです。A社製品の性能面の優位性を認識していた事業部長は、結局、A社のCPUを採用しました。

このケースでは部下がリーダーシップをとっています。やりたいことの中身と能力に自信があれば、自らが上司を引っ張っていっていいのです。ただ、このように敢えて報告をしない奇策を使うには条件がある。それは信頼。この部下は日頃、報・連・相をきちんと行い上司の信頼を勝ち得ていた。だから報・連・相を無視する思い切った行動が取れたのです。

東京大学の高橋伸夫先生が、優秀な部下は上司から言われた仕事をやりすごしている、という議論をされています。優秀な部下は上司におうかがいをたてず、自分の優先順位で仕事をこなしている、というのです。報・連・相を無視しているようにも見えますが、それでも評価が高く、やりたい仕事を任せてもらえるのは、部下が上司目線で何が大切かを考えているから。報・連・相はひたすら行うのではなく、上司が考えていることを予測しながら行うことが大切です。

また、やりたい仕事をするためには、やりたくない仕事を嫌がらないことが、実は近道です。最近は自分のキャリアは自分で決める、とキャリアデザインを意識しすぎて、やりたい仕事ができないと、すぐに離職する人も多い。

ただキャリアには「運」を抜きに語れない部分があります。実際、成功している人は「運がよかった」と答えることが多い。しかし彼らは運よくやりたい仕事ばかりしてきたわけではない。彼らは望まない仕事をするときも不運だと思わず前向きに取り組み、貪欲に学ぼうとするのです。「運」は、こうした学びの姿勢から転がり込んでくることが多いのです。