「完全栄養食」はどういうものか
私たちに必要な栄養がバランスよく配合されているという「完全栄養食」。以前は種類が少なく、食事時間を確保できない人が利用する栄養剤のような印象でした。ところが、最近は冷凍食品、パスタ、調理パンなどの多種多様なものが登場し、普通の食事として利用する人が増えて売上も伸びているようです。
一方、スーパーやドラッグストア、ネット広告などで目にする機会が増えて関心はあるものの、「本当に栄養がとれるのか」「健康に悪影響はないのか」などと不安に思って利用を躊躇している人もいるでしょう。そこで今回は一般に販売されている完全栄養食について、栄養学の知見に基づき解説することにしました。
まず、完全栄養食とはなんでしょうか。昔は、鶏卵のように他と比べて栄養バランスのよい食品を完全栄養食と呼んでいました。でも、実際には全ての栄養が含まれているわけではなく、誤解を与えかねない表現といえます。それに対して現代の完全栄養食は、ビタミンなど必須とされる微量栄養までを満たす食品として開発されたもの。明確な定義こそありませんが、厚生労働省が公表している食事摂取基準で決められた「1食あたりに必要な栄養素」を摂取することができる食品を完全栄養食と呼ぶことが多いようです。
毎日の食事に求められる3つの機能
そもそも、私たちが毎日食べている食事(食品)には、次の3つの機能があるとされています。
二次機能:「嗜好」に関わる機能で、感覚を刺激し食思(食べたいという気持ち)を誘発する。
三次機能:「生体調節」に関わる機能で、生活リズムや疾病の予防などに関わる。
完全栄養食は、このうちの一次機能に特化した食品であるといえるでしょう。ただ、当初は機能性のみ追求した食品が多くみられましたが、ここ最近は二次機能にも配慮した商品も増えてきています。たとえば、見た目も美味しそうな具だくさんのスープ、冷凍食品ではスパゲティやお好み焼きなどがあり、普通の冷凍食品と同じ感覚で利用することができます。
さらに今後は、特定保健用食品などのように疾病の予防や健康に役立つことを目的とした三次機能を強化した商品も増えてくるのではないかと予想されます。