「石丸現象」の教訓をまったく活かせていない
ただ、そうした立憲の路線について論戦を交わす前に、代表選をめぐって泉代表のほかに前代表の枝野氏や元首相の野田氏の顔が並ぶというのは、あまりにも刷新感がなく、守旧的な印象を受けてしまう。
立憲関係者は「首相が退陣してさまざまな勢力が右往左往する自民に対して、立憲は重鎮による安定感を演出する」と語るが、多くの国民はそう肯定的には受け止めないだろう。
都知事選の結果について分析した拙稿「『石丸伸二氏のズラし戦略』にまんまと引っかかった…『蓮舫氏の惨敗』で露呈した立憲民主党の限界」でも記したが、裏金問題などをめぐる政治への不信感は、自民だけでなく、民主党政権からの流れを汲む立憲にも注がれている。
それゆえに、都知事選では小池百合子氏と蓮舫氏という昔からいる政治家による「国政与野党の代理戦争」という、旧来型の構図に辟易とした有権者が新興勢力である石丸伸二氏に一気に流れ、石丸氏は2位になるまで躍進したのだ。
そのことを前提とすると、若手中堅が名乗りを上げる自民と、昔も代表を務めていたようなベテランが並ぶ立憲、どちらが魅力的に見えるかは明白だろう。
最新の世論調査では、自民↑立憲↓
実際に日経新聞とテレビ東京が8月21、22日に実施した緊急世論調査では、自民の政党支持率が4ポイント増の36%となったのに対して、立憲は2ポイント減の8%となってしまった。
だが、すでに立憲代表選は告示が9月7日、投開票が同23日に迫っており、構図を今から大きく変えるのは困難となっている。
もちろん、次期総理となる自民党総裁に誰が選ばれるのか、立憲代表に誰が選ばれるのかはこれからの論戦次第であり、その結果によって与野党の印象は大きく変わっていくだろう。
ただ、それぞれのトップを選ぶ党内選挙の後は、政府与党が秋解散を仕掛けて衆院選になだれ込む可能性も高い。
思えば、2021年衆院選は菅義偉前首相が支持率を落とし、岸田文雄首相に交代した直後で立憲がまさかの議席減となってしまい、枝野氏が代表を辞めることとなった。
次の立憲代表は早期に行われるかもしれない解散総選挙に立ち向かうことができるのか。
それは、どれだけ自由闊達で勢いのある選挙戦を立憲代表選で演出することができるか、まさに候補者擁立が進む今から問われていると言える。