日本に「ラストチャンス」はもうやってこない

「失われた30年」と言われますが、この30年はある意味では「産まれてくるはずの子どもたちが失われた30年」でもありました。それは同時に「結婚が失われた30年」です。

本来発生したであろう結婚や出生が失われた裏で、生み出されてしまったのが氷河期世代の若者です。

氷河期世代とは、1990年代~2000年代前半にかけて就職期を迎えた世代で、1970年から1982年に生まれた世代を指します。2024年現在では、主に40代前半から50代になっています。

ちなみに、1995年に25歳だった氷河期世代の若者が50歳を迎えたのが2020年ですが、この年の国勢調査で50歳時未婚率(生涯未婚率)は男女とも過去最高記録(男28.3%、女17.8%)を打ち立てています。

少子化問題について、政府もメディアも毎年のように「今年がラストチャンス」などと言いますが、日本の少子化は1990年代に確定しており、ラストチャンスはすでに随分前に終了しています。

日本の少子化対策が根本的に外れであることは、当連載でも何度も指摘してきた通りですが(〈「子育て支援」はむしろ少子化を加速させている…マスコミがばら撒いた「子育てには金がかかる」という呪い〉参照)、そもそも、今の出生数が減少し続けているのは、結婚した夫婦が子どもを産んでいないからではありません。

暗い表情の女性
写真=iStock.com/maruco
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日本から「母親」が消えてしまった理由

これも過去に何度か書いていますが、一人の母親が産む子どもの数は1980年代と比べても減少しているわけではなく、出生数が減っているのは産む母体としての母親の数が減少した「少母化」によるものだからです(〈政府の対策は「ひとりで5人産め」というようなもの…人口減少の本質は少子化ではなく「少母化」である〉)。

なぜ「少母化」が起きたかといえば、1990年代後半から2000年代前半にかけて「本来は来るはずの第3次ベビーブームが来なかった」からです。

1970年代前半、日本は第2次ベビーブームを迎えました。その時に生まれた子どもたちが結婚適齢期を迎えるのがちょうど1995年以降だったわけですが、タイミングが悪いことに、その時期日本はバブル崩壊後の大不況時代に突入していました。新卒有効求人倍率がもっとも低くなり、若者の完全失業率がもっとも高かった時期です。

ベビーブームどころか、当時の若者は自分たちの就職や生活に汲々としていて、結婚どころではなかったでしょう。

当時、氷河期世代の若者が置かれた環境は悲惨だったのですが、その悲惨な環境を放置した結果が現在の少子化につながっています。