20代の名目所得は20年超で1%しかあがっていない
では、氷河期世代と比べて、今の令和の若者の環境は良くなったのでしょうか。
いいえ、むしろ、それ以上に最悪な状況にあります。冒頭で、「生まれてくる子どもたちが失われた30年」と表現しましたが、同時に「若者の経済環境がまったく改善されなかった30年」でもあります。確かに、求人倍率や失業率という見かけ上の雇用環境の数字は格段に改善されていますが、氷河期より今の若者のほうが経済的に苦しくなっています。
国民生活基礎調査より、氷河期渦中であった2000年から2023年までの20代の所得の推移を見てみましょう。グラフは、2000年を1とした場合の推移で示しています。
確かに、2000年と比べれば、20代の名目所得はわずか1%とはいえ増えています。しかし、23年もかかって1%しかあがっていないことのほうが異常です。
就職氷河期よりも最悪な時代を生きている
加えて、その途中においては、リーマンショック後の2010年ごろにかけて名目所得は減少し続けた挙句、やっと23年前と同等に戻ったにすぎません。要するに、若者の所得はここ20年余もまったく増えていないということです。
そして、問題は名目所得ではなく、可処分所得のほうです。いわば、額面の給料が多少増えたところで、それ以上に税金や社会保険料などの国民負担が増加しているために、令和の若者の手取りは2000年の若者の手取りよりむしろ10%もマイナスとなっています。さらに、最近では物価高もあり、実質可処分所得で計算すれば、2000年対比でマイナス16%にもなります。
就職先がなく失業率も高く、就職しても給料があがらなかった最悪の氷河期時代の若者よりも、令和の若者の経済環境のほうが悪化しているということになります。
繰り返しますが、第3次ベビーブームを消失させた要因は、当時の若者の経済環境の悪化によるところが大きかったわけですが、それらがほぼ30年近くまったく改善されないまま現在に至っているのです。