現金でもらえば税務署にはわからない

たとえばパチンコ店や飲食店など、そういった業種では、脱税が非常に多いのです。

これは今に始まったことではありません。日本が申告納税制度を取り入れた戦後まもなくから、ずっと続いている傾向です。

サラリーマンが税金から逃れようがないのは、サラリーマンの税金は税務当局にほぼ完全に把握されているからなのです。

税務当局にわからないようにして金を手に入れられれば税金はかかってこない。税金というのは今でもそういう原始的な仕組みになっているのです。

小切手や銀行振込でお金を受け取れば、金融機関に記録が残ります。税務当局がそれを発見すれば、簡単に課税されてしまいます。

金融機関
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小切手や銀行振込は金融機関に記録が残る(※写真はイメージです)

しかし、誰も見ていないところで現金をもらい、誰も知らないところに隠してしまえば、税務当局は課税のしようがありません。

税務当局が隠し場所を見つけるまでは、税金はかからないのです。

5億円ものお金を現金で受け取っていた

田中角栄はロッキード事件では、5億円ものお金を現金で受け取ったそうです(角栄自身は最後までこれを否認していますが)。

5億円のお金を現金で受け取るのは、簡単なことではありません。渡す方ももらう方も、相当な工夫と苦労をしなければなりません。それができたために、田中角栄は我が身を救ってきたのです。

たとえば金丸信元代議士は、裏献金を割引債で持っていました。それが晩年になって、国税当局に見つかり、脱税で逮捕されることになりました。

また、自民党の橋本派は日本歯科医師会からの裏献金を小切手で受け取っていたために、政治資金規正法違反に問われました。その結果、橋本派は没落しました。

田中角栄は、5億円の賄賂を現金でもらっていたので、脱税として起訴はされませんでした(単なる課税漏れでの処理)。

脱税というのは、誤魔化して得た収入を自分の財産にしたときに初めて確定します。田中角栄の場合は、収入を誤魔化していることはわかっても、それを自分の財産にしたかどうかは、わかりませんでした。

「もらった金がどこにいったかわからない」状態では、脱税での立件は無理だったのです。