月給10万円で「両親に頭を下げた」ことも
独立リーグでトップ選手となってからは個人スポンサーもつき、無償で用具を提供される機会も多くなったが、入団当初は金銭面でかなりの自己負担をしいられた。
木製バットはリーグから一定額の補助があり、4、5本は購入できるが、練習試合を含めて80~90試合を戦い抜くには心許なく、足りない分は当然自腹を切ることになる。給料が支給されるのはシーズンの半年間のみで、月給は手取りで約10万円ほど。「恥ずかしい話ですが、両親に頭を下げたこともあります」と明かす。
野球はお金がかかるということを身をもって体感して競技を離れた後、ベースボール5公認インストラクターを務める六角彩子さんが代表を務める「5STARs」に加入。「第3の野球型競技」に出合い、驚いたのは金銭面での負担の違いだ。
「全然違いますよね。野球はバットが1本2万円、グラブは6万~7万、サングラスも2万ぐらいはするし、シューズや手袋もこだわったら高いじゃないですか。それだけでも軽く10万円は超えます。ベースボール5はボール1球が700円弱、半袖、短パンで4000~5000円、シューズ7000~8000円。あと私は、4000円の膝パッドを使っていますが、それを入れても野球の10分の1ぐらいで収まっちゃいますよね」
お金がなくてスポーツができない子を減らすために
宮之原さんはベースボール5を始めてから1年足らずで初の世界大会である「WBSC Baseball5 ワールドカップ2022」に日本代表として出場。準優勝を達成し、個人としてはソーシャルMVP「High5 Award」を受賞した。今は都内の小学校で教職員として勤務しながら、Spirit Bondsで自身のプレーに磨きをかけるとともに、ユース世代の育成、普及活動にも力を入れている。
「日本でも世界でもベースボール5を普及していく活動をして、その中で同じダイヤモンド型スポーツの野球やソフトボールも一緒に盛り上げていきたいと思っています。そのためにも、ユース世代を盛り上げて、もちろん、そのまま競技を続けてくれたらハッピーですけど、野球、ソフトボール、サッカー、バスケットボール、何でもいいので、運動を通して豊かな人生へとつなげてもらえたらという一心でやっています。」
誰もが気軽に始められるベースボール5を通じて、野球を含むスポーツ界全体が活性化すれば、こんなにもうれしいことはない。ベースボール5の発展、そして野球界への恩返しのため、宮之原さんは今日も全力で腕を振る。